北条司『キャッツ❤︎アイ』が“昭和男子”に与えた衝撃とは? 新作アニメで再注目すべき三姉妹の魅力

北条司『キャッツ❤︎アイ』が与えた衝撃

 北条司原作の伝説的作品『キャッツ♥アイ』が、ついに完全新作アニメとして復活する。9月26日より「ディズニープラス スター」で独占配信がスタート。前編は第1話から第6話が9月26日から10月31日まで、後編は第7話から第12話が12月26日から2026年1月30日まで、毎週1話ずつ順次配信される予定だ。


 Adoが歌う新オープニングテーマ「MAGIC」を使用した本予告映像に、キービジュアルも解禁され、ファンの期待は最高潮に達している。北条氏も「初連載作品で手探りの中描いていたのでこそばゆい気持ちですが、新作はより原作に近い形で、これまで登場しなかったキャラクターも活躍します」とコメント。原作ファンはもちろん、初めて作品に触れる若い世代にも楽しめる作品となりそうだ。

 『キャッツ♥アイ』は1981年から1984年まで「週刊少年ジャンプ」に連載された北条司のデビュー作で、昼は喫茶店「キャッツアイ」のオーナー、夜は怪盗として美術品を盗む三姉妹の物語。この二重生活こそが作品最大の魅力であり、昼と夜のギャップが読者や視聴者を惹きつけた。

 三姉妹の個性も際立つ。主人公ポジションの次女・来生瞳(きすぎ ひとみ)は明るく勝ち気で運動神経抜群。事件現場での活躍が目立ち、高校時代から付き合う刑事・俊夫との恋愛は、泥棒と刑事という立場の対立を越えた緊張感を生み、同時進行する事件と恋がストーリーに深みを与える。長女・来生泪(きすぎ るい)は冷静沈着で姉妹の保護者的存在。成熟した色気と判断力で三姉妹の作戦を支える。一方、三女・来生愛(きすぎ あい)はショートカットが似合う無邪気な美少女で、一人称の「ボク」は、当時としては画期的で、オタク文化の浸透を後押しした。彼女は父親の顔を知らずに育ったため、少々ファザコン気味な性格でもある。

 物語は単なる怪盗アクションに留まらず、計画、追跡、脱出の三段階で緻密に描かれ、三者三様の性格が事件解決に不可欠なチームワークを生み出す。

 作品の象徴とも言えるのが、三姉妹のレオタード姿だ。腰に巻かれた色違いのウエストリボンをアクセントにしたデザインは、単なるコスチュームではなく、1980年代の男臭かった「週刊少年ジャンプ」にあって圧倒的な衝撃を読者に与え、“夢の女性像”として鮮烈に印象づけられた。今の若い世代には、いとうあさこや森三中の衣装というイメージしかないかもしれないが、「フラッシュダンス」やジャズダンスが流行した当時の男性にとっては、「レオタード=セクシー」。アクションでしなやかに体を動かす三姉妹の姿は美しさと強さ、自由な自立性を兼ね備え、とりわけ少年たちの想像力をかき立てた。新作アニメでもレオタード姿は再現され、原作の華麗さとスタイリッシュさが現代のアニメーション技術でさらに強化されている。

 また、『キャッツ♥アイ』は北条司作品における「原点」とも言える作品であり、ここで描かれたキャラクター造形やアクション描写、犯罪心理の描き方は、後の代表作『シティーハンター』へとつながる。特に原作漫画で登場する「神谷」というキャラクターは、『シティーハンター』の冴羽獠の原型ともいえる存在で、北条作品の系譜を追体験できるはずだ。

 新作アニメのエンディングは杏里の名曲「CAT’S EYE」をAdoがカバーし、昭和と令和をつなぐ音楽演出で世界観を彩る。夜の街を駆け回る三姉妹のアクションや、美術館の厳重警備をものともせず名画を盗み出すシーンなど、スピード感あふれる映像表現で視聴者は引き込まれることだろう。

 アニメでは描かれるかは不明だが、原作漫画の最終回では瞳に予想もしない事態が起き、敏夫との結末は涙をそそる「傑作」と呼ぶにふさわしいラストだった。新作アニメを機に、こちらもぜひチェックしていただきたい。

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