『家守綺譚』が漫画化、試し読み公開 人と自然が近かった時代の少し不思議な物語

梨木香歩による小説『家守綺譚』が漫画化され、近藤ようこによる単行本が2025年9月25日に新潮社から発売される。発売に先駆け、試し読みが公開されている。
『家守綺譚』は2004年に刊行された梨木の小説で、静かな文体と豊かな自然描写、そして「少し不思議」な登場人物たちが織りなす世界観で高い評価を得てきた。明治時代の家に暮らす青年が、季節の移ろいや動植物、さらには人ならざる存在との交流を綴る物語であり、日本文学の中でも独特の位置を占める作品である。
今回、その小説を漫画家・近藤ようこが手がけた。近藤はこれまでも文学作品や幻想的な題材を得意とし、独自のタッチで知られている。『家守綺譚』の漫画版は、雑誌「波」にて全35回にわたり連載され、読者から反響を呼んできた。単行本化にあたり、カバーには原作の世界観を下敷きにしつつ、近藤が新たに描き下ろしたイラストが使用されている。
試し読みでは、原作小説の持つ透明感と、近藤の筆致による絵の静けさがどのように響き合うかを確認できる。小説の文字が読者に与えてきた想像力の余白が、絵として形を持ったとき、どのように変化するのか。文学と漫画という異なる表現が交差する点に、本作の大きな特徴があるといえる。
単行本の刊行は9月25日。原作に親しんできた読者にとっても、漫画から触れる新しい読者にとっても、異なる視点で『家守綺譚』を体験する機会となりそうだ。
あらすじ
亡き友の家で待っていたのは、四季折々の草花と、ちょっと不思議な毎日でした。時は明治時代、文筆家・綿貫征四郎は、亡き友、高堂の家の「家守」として暮らすことになりました。待っていたのは、白木蓮や都わすれ、萩、サザンカなど植物に満ちた庭。そして、サルスベリに懸想されたり、河童の衣を拾ったり、化狸を助けたりといった不思議な出来事が次々と起こります。季節は巡り、秋から冬、ふたたび春へ。そして綿貫が、ついに高堂の物語を書こうとしたとき――。人と自然が近かった時代の少し不思議な物語です。
原作者・梨木香歩 コメント
「行間が、ここまで絵にできるなんて」
漫画家・近藤ようこ コメント
「やさしく、きびしく、しあわせな仕事でした」
■書誌情報
『家守綺譚』
原作:梨木香歩/漫画:近藤ようこ
価格:上1,870円(税込)/下1,815円(税込)
発売日:2025年9月25日
出版社:新潮社
試し読み:https://www.shinchosha.co.jp/book/356471/preview/
























