『呪術廻戦』近未来スピンオフ連載で広がった可能性 「宿儺が主人公の平安編」への期待も

※本稿は『呪術廻戦』のネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
9月8日に発売の「週刊少年ジャンプ」41号にて、マンガ『呪術廻戦』の公式スピンオフ作品となる『呪術廻戦≡(モジュロ)』の連載が開始された。原作は昨年9月で完結した本編と同じく芥見下々が手掛け、作画は『暗号学園のいろは』で作画を務めた岩崎優次が担当する。『呪術廻戦≡』は「地球の行く末をめぐる」近未来を舞台に、半年程度の短期集中連載として構成され、芥見氏によれば本編連載中にもスピンオフの提案はあったが、自身がコントロールできない範囲で作品名が広がることを懸念し一度は断った経緯があるという。しかしその経験を経て「パラレルなら」と複数の企画を構想し、最も突飛だった発想が連載会議を通過し今回の形に至った、と明かしている。岩崎氏についても「すごいぞ!!うまいぞ!!綺麗だぞ!!」とコメントし、新しい『呪術廻戦』の入り口として『モジュロ』を楽しんでほしいと語っている。
連載開始直後からネット上では「禪院真希と乙骨憂太の孫なのがまた良い」「本編で語れなかった設定が明かされたり、前作キャラの子孫が登場しそうで楽しみ」といった期待の声も多い一方で、「SFとかカタカナとかではなくて、ダークな和風な世界観で描いてほしかった」「この画が悪いわけじゃないけど好みじゃなくて受け付けない」「宇宙人設定でなんか微妙になる」といった違和感も示されている。特に「宇宙人」が登場する設定に、“呪霊”という日本特有の怪異性を強調してきた本編とのギャップには、戸惑うファンも声もあった。
そうした中、根強いのが「宿儺が主人公の平安編」を望む声である。両面宿儺は『呪術廻戦』における最重要キャラであり、千年以上前の平安時代に実在したとされる呪術師で、当時の術師たちが束になっても敵わなかった“史上最強”にして“呪いの王”である。その死後に残された指は「特級呪物」となり、五条悟を含む現代の術師たちが封印も破壊もできなかったほどだ。腕が4本、顔が2つ、腹にも口を持つ異形の姿は伝説の両面宿儺を想起させるが、生前の本名や実際の所業は明かされていない。ファンブックで芥見氏は「呪詛師っちゃ呪詛師ですけど、もっと天災に近いものだったのでは」と述べており、人知を超えた存在であったことがうかがえる。
作中で平安期の宿儺が描かれたのは限られた回想のみで、219話で新嘗祭に招かれ祈りの対象とされる場面がようやく登場した程度である。周囲の人々が「なぜあの様な怪物を招くのだ」と忌避する台詞もあり、恐怖と畏怖の混じった“神”のような扱いが示唆される。にもかかわらず、宿儺がその場でおとなしくしていた理由など細部は語られていない。
さらに「天使」と呼ばれる過去の術師との因縁も示されているが、詳細は不明だ。天使は「堕天」を一掃することを目的としており、宿儺が自ら「堕天は俺だ」と語った場面があったが、その理由や背景は伏せられたままである。天使自身も千年前の術師であり、宿儺討伐に挑んだが敗れた可能性が示唆されるなど、平安時代の人間関係はまだ輪郭すら見えていない。
また、主人公・虎杖悠仁の出生をめぐる謎も平安期と無縁ではない。宿儺は出生前に双子の片割れを喰らい、その魂が悠仁の父「仁」として転生したという設定が明かされているが、仁と母「香織」のその後や、羂索がどこまで関与していたかなど、重要な点は未解決のままである。宿儺の片割れの生まれ変わりという設定からすれば、平安期の出来事が現代の因縁を生んだ可能性は高く、ファンが平安編に期待する理由の一つとなっている。
さらに、宿儺、羂索、天元が旧知の仲であることなど、断片的な情報が積み重なることで、読者は「すべての起源である平安時代こそ物語の鍵」という印象を強めるようになった。宿儺自身も最終回で異形の忌み子として産まれ虐げられた過去や、復讐者であるという本音をほのめかしたが、人生を変え得た二度の機会や、裏梅以外の巫女の存在など、物語の核心に迫る要素は未消化のままである。
こうして見ていくと、本編が近未来的な舞台で広がる『モジュロ』を提示したことで、むしろ原点回帰として「宿儺が主人公の平安編」を求める声が強まっているのも頷ける話だ。
もし今後、平安時代を舞台に宿儺や天使、天元、羂索らの起源を描く長編スピンオフが実現すれば、『呪術廻戦』世界観の理解は飛躍的に深まるだろう。近未来の『モジュロ』が新たな視点を提示する一方で、過去を掘り下げる「平安編」はシリーズ全体の厚みを増す最有力のカードであり、多くのファンがその実現を熱望している。























