令和の“ニューウェーブ”90年代生まれの新たな才能が続々爆誕! 今注目したい漫画家たちの注目作4選

個性的な漫画家たちの一大拠点となっているリイド社のトーチコミックス。とくに2025年に入ってからは、令和の“ニューウェーブ”と呼べるような新世代作家たちの商業デビュー単行本が次々と刊行されている。

まず紹介したいのは、7月31日に発売された2冊。1995年生まれの龍村景一による初単行本『ツッパリ探偵怪人メルヘン心中』と、1997年生まれの千葉ミドリによる初単行本『緑の予感たち』だ。
『ツッパリ探偵怪人メルヘン心中』は奇想天外な設定に満ちた実験的短編集。たとえば「ツッパリヤンキー地獄録」は死亡した不良少年の意識が近未来AIによってシミュレーションされた世界で目覚め、生き返らせてもらうことを条件に“100万通りの死に方”を経験させられる……という話だった。
また「心中遊泳」は、浜辺に打ち付けられた人魚からかわいらしい少女が生まれ、村にある小学校のセンセイが世話役に任命されるという設定。一部の作画に生成AIを活用したことを公言しており、生々しい手描きの世界に記号的な人魚の美少女が浮き上がる仕掛けとなっている。なお同作がXで公開された際には、約170万インプレッションを獲得するほどの話題を呼んだ。
【❗️🧜♀️本日発売🕵️❗️】
龍村景一『ツッパリ探偵怪人メルヘン心中』は本日7/31から発売🥋!
全国の書店と電書ストアにて販売中です。主にトーチwebで掲載した短編のほか、一部他社で描いた読切、著者解題、描き下ろし読切『BRAIN DAMAGE』等が収録されています。
詳細は▼https://t.co/WwKlZVu6MT pic.twitter.com/hOKhQiDryJ
— 龍村景一 (@YumboGoldLove) July 31, 2025
収録作はいずれもたんに奇抜な設定と戯れているわけではなく、物語のクライマックスでは人間の情念が限界を超えてあふれ出すような展開が描かれており、感情を大きく揺さぶってくる。

それに対して『緑の予感たち』は、現実と虚構のあいだを軽やかに行き来するような作風が特徴的だ。物語としては『パプリカ』や『千年女優』を手掛けたアニメ監督・今敏、画風的には『セクシーボイスアンドロボ』や『茄子』の黒田硫黄を彷彿とさせる部分がある。
【🎉🎉🎉本日発売🎉🎉🎉】
千葉ミドリ『緑の予感たち①』(リイド社)
日常の裏で蠢く、幻想と記憶のスペクタクルな冒険。
第1話「カッパの理髪店」の公開から大反響を呼びつづける、不可思議で驚きに満ちた異形の短編シリーズ。
新鋭・千葉ミドリのデビュー単行本、ついに発売です🦎 pic.twitter.com/cTteUq9L7A— トーチweb (@_to_ti) July 31, 2025
収録作の「靴去る」は、巨大な猿が下駄箱から靴を盗んでいく「クツサル」という都市伝説をめぐる物語。主人公・貝野は母校に教育実習生として赴任している最中に、その都市伝説に巻き込まれてしまう。そして貝野はクツサルから靴を取り返そうとするが、自分のなかに閉じ込めてきた子どもの頃の“恐怖の夜”の思い出が蘇る……。
ほかにもカッパに髪を切られる夢をめぐって男女の想いがすれ違う「カッパの理髪店」、温泉旅館にタイムトラベラーが訪れてきたことから騒動が巻き起こる「未来の星の下」など、独特のイマジネーションに満ちた世界観が広がっている。
少年少女の感性をビビッドに描き出す新人作家

さらに6月30日に発売された『あみかはポテトになりたかった 小川しらす作品集』も重要な作品だと思われる。1998年生まれの新鋭・小川しらすの初単行本だ。
🍟小川しらす 初めての単行本が出ます🍟
🐟2025年6月30日(月)発売🐟
『あみかはポテトになりたかった 小川しらす作品集』(リイド社)
今までトーチwebにて掲載されていた4作品を収録した作品集になります。
Now Printingですが表紙イラスト、とてもよいものが描けました…!お楽しみに! pic.twitter.com/SuOUxfWh0v— 小川しらす🥔作品集発売中 (@shirasuogawa) May 20, 2025
表題作はSNSで10万いいねの反響を呼んだ話題作。主人公の本田あみかは毎日ファストフード店のポテトを食べている女子高生で、その一風変わった食生活には複雑な家庭の事情が絡んでおり、物語が進むにつれて彼女の絶望的な孤独が浮かび上がっていく。
また「グリンメロングリーン」もSNSで話題を呼んだ作品で、同じように孤独をテーマの1つとしている。主人公の中学生・大場は他人とまともな関係を築くことができず、同級生に対しても悪口を言うか嫌がらせをしてばかりいる。大人からも見放されかけている状況だが、その背景には過酷な家庭環境があった。
同書の収録作には、誰にも理解されない孤独のなかを生き抜く少年少女たちの姿が描かれており、その心理描写のリアリティは圧倒的と言っていいだろう。

そして2月21日に発売されたのが、やうやうとの初単行本『不老不死にならなくちゃ』。表題作は不老不死になるための方法を探す田舎の女子高生2人を主人公としており、無限に広がる空想とやりきれない現実のはざまで揺れ動く思春期の心が丁寧に描かれている。
\🎉🎉2/21(金)単行本発売!!🎉🎉/
やうやうと『不老不死にならなくちゃ』(リイド社)
成長できない〈永遠〉を切実に描き出してきたジュブナイル奇想短編群が本にまとまります。
かわいくも不穏、永遠だけど刹那的。ぜひお楽しみください💀試し読みはこちらからhttps://t.co/6V0SNJTQGF pic.twitter.com/iwj3YN5HIN
— トーチweb (@_to_ti) February 1, 2025
また自分の口のなかにある学校に通う少女の物語「くちのなか」、カミナリに恋焦がれる少女とそんな彼女が気になって仕方ない男子を描いた「おちてきて」など、同書では思春期の葛藤がファンタジーという形式をとって表現されているのが特徴だ。
今回紹介した4冊はそれぞれ作風が大きく異なるものの、リアルとファンタジーを巧みに混交させながら、言葉で言い表すことが難しい心の状態を描こうとしているところは共通している。掲載媒体の「トーチweb」がオルタナティブな漫画表現を追求するメディアだからこそ開花した才能と言ってもいいかもしれない。
そのほか今年のトーチコミックスでは、藤見よいこの『半分姉弟』などさまざまな話題作が登場。8月29日には、男子高校生2人のボーイズ・ライフを描いたmememeのデビュー作『FAVORITES フェイバリッツ』も発売される。漫画表現の革命はまだまだ続きそうだ。
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『FAVORITES フェイバリッツ』
🍒待望の第1巻発売決定🍒
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㊗️8/29(金)発売!
お互いがお気に入り?関西弁男子ふたり、しゃべくりまくりのボーイズ・ライフ。
単行本限定描き下ろしも収録📖
※単行本特典は決まり次第お知らせします📢 #フェイバリッツ @manga_mememe🔗https://t.co/xV1A3MpGed pic.twitter.com/isbz7wI8zQ
— トーチweb (@_to_ti) June 24, 2025






















