又吉直樹×ヨシタケシンスケ「今回は毒を入れました」 ベストセラーの続編『本でした』刊行インタビュー

又吉直樹×ヨシタケシンスケ インタビュー

今回は「毒を入れたい!」と思った

――私は特に、又吉さん担当の「その本は人物相関図が~でした」と「その本は、主人公が「本が好き」でした」、ヨシタケさん担当の「その本が最後の一文が『この集合写真の全員が笑顔だったのは~』」と「その本の販売地域が、『鬼ヶ島のため~』」が印象に残っています。それぞれ、このエピソード制作時の裏話などがありましたら、ぜひ教えてください。

又吉:「人物相関図」は、イラストを見た時にすごく難しそうだなと思ったので、話を作るという意味ではこれが一番苦労したかもしれないです。何度も人物相関図を確認しながら話を作っていったのですが、読み返す度に混乱して(苦笑)。でも、最後の終わり方は「ちゃんと網羅できたかな」と思っています。説明書がある中で、そこに向かって自分がどう肉付けしていくかみたいな感覚だったので、まさに“共作”というものが一番色濃く出ている話だと思います。

 「主人公が本が好き」も、僕が書いてはいるんですけど、事前にヨシタケさんや制作に関わったみなさんと打ち合わせした時に「今回はどういう本にするか」といった話し合いの中で出たことを結構取り込んで作っていったので、どちらも僕にとっても大事な話ではありますね。

――ヨシタケさん担当であげた2作は、全体的にヨシタケさんらしさも入っていながら、又吉さんと共著というところで見えてくる“毒っ気”のようなものを特に感じました。

ヨシタケ:まさにおっしゃる通りで、今回は「毒を入れたい!」と思ったし、入れていい企画だと思ったんです。いつもの自分の本だったら入れにくいようなお題をいただいたことを口実に、存分に毒を入れ込みたいと思いました(笑)。「集合写真が笑顔だった」は、単純にそのお題から一番遠いもの、一番起きてほしくない理由って何だろうというところから逆算して、初に「こういう話だろうな」とイメージした「そこ」じゃないところに連れて行くのが、この話でチャレンジしたかったことです。

 「鬼ヶ島」の方は、鬼側の目線で語られるものということと「桃太郎」という誰もが知っている話を、視点を変えたらどう見えるかを突き詰めてみました。鬼と人間、違う立場で見たものや見え方も、元々の話を知っているからこそ際立ってくるところもあるので、ある意味、ベースがあるから作りやすいものではありますが、細かい肉付けみたいな部分を考えるのは楽しかったです。どちらの作品も、これまでとは違うことをチャレンジできるいい機会をいただいたなと思います。

又吉:僕、このお話に描いてある鬼の絵がすごく好きでした。「鬼族の長老」とかめっちゃいいですよね。

ヨシタケ:嬉しいです。僕は「鬼滅の刃」とか見ていないから、一般的な今の鬼とは違うだろうな、何かと被っていたら困るなぁと思いながら描きました。鬼の長老の角が片方折れているのも、きっとサイドストーリーがあるんだろうなと想像していましたし、読者の方にもそう思ってもらうように書くことが大事だったんです。あくまでもここに載っているのは全部ダイジェストなので「ざっくり言うとこういう本ですよ」ということだけが書いてあるけど、本当は全部がもっと長いお話のはずなんですよ。そこが今作の大事なことで、色々想像したくなるきっかけみたいなものを話の中に出さなきゃなと思っていました。

――又吉さん担当の「その本は、主人公が、本が好きでした」で「小学校になったら読む本」のリストの中に、ヨシタケさんの『あるかしら書店』が入っていましたね。

又吉:あのリストに書いた本の中で『あるかしら書店』だけが実在して、あとは全部僕の創作なんです。そこも結構直しましたね。小さい時に読む本って、作者の名前もひらがなのことが多いのかなとか色々検証して、ちょっとずつ変えていきました。普段だったらしない作業だったので、そういうことができたのも今作ならではだと思います。

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