又吉直樹×ヨシタケシンスケ「今回は毒を入れました」 ベストセラーの続編『本でした』刊行インタビュー

又吉直樹×ヨシタケシンスケ インタビュー

 お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹と、人気絵本作家・ヨシタケシンスケが共著し、累計30万部を突破した前作『その本は』から3年ぶりの新作となる『本でした』(ポプラ社)が8月5日に発刊された。

ヨシタケシンスケ、又吉直樹『本でした』(ポプラ社)

 本作は、村はずれに住み着いたあの2人の男が、村人たちから寄せられたほんの1行のヒントから本を「復元」していくというストーリー。

 今回は『本でした』刊行に際して、著者二人のインタビューを行った。前編では、共著だからできたことや面白さ、お互いの作家としての印象などを語ってもらった。

「自分だったらこんなお題を出されたら嫌だろうなぁ」っていうやつを投げました(笑)

――今作は「タイトルだけ」や、「最初」または「最後の一文」だけなど、ちょっとしたことを手掛かりにその本を復元していくお話でしたが、それぞれのお題で一番難しかったものと面白かったものはどれでしたか?

ヨシタケ:今作の作り方としては、最初にお互いへのお題をたくさん出すんです。ある程度たまった時点で、お題の中から自分がいいと思うものをそれぞれ選んで、そこにお話をつけていく。そして、余ったものもお題だけで見せようと話していました。

 自分が出したお題のどれを答えるかは相手が選ぶのですが、僕は割と「最後の一文」ばっかり選んでいるし、又吉さんは書き出しやタイトルから始まるものを選んでいるんです。要は自分がお話にしやすいものをおのずと選んでいるから、選んだ後の苦労はそんなになくてどれも面白かったです。それぞれの物語の作り方が結構違うものなんだなという発見もありました。

又吉:ヨシタケさんが書いてくれたお題リストは面白いのがいっぱいあったので、自分で「これ、いけそうだな」っていうのを選ばせてもらいました。ヨシタケさんのお題の中には、イラストの中にいいヒントが含まれているものもあって「せっかく絵も描いてくださったのに、これを採用しないのはありえへんな」と思って、半ば強制的にイラストつきのものを採用していたなということを、さっき思い出しました(笑)。

 やっぱりイラストがあると想像しやすくて「その本は挿絵が」の話は、絵がほぼ物語になっていたので、その通りにセリフを書いていったような感じです。どれもやってみると面白くて、絶対そうはならないであろう話が自分の中で段々と出来ていくのはすごく楽しかったですね。

絵本作家 ヨシタケシンスケ

――お互いへのお題はどのように考えたのですか?

ヨシタケ:又吉さんはどんな球を投げても必ず打ち返してくれることは分かっていたので、むしろ「自分だったらこんなお題を出されたら嫌だろうなぁ、困るなぁ」っていうやつを投げました(笑)。自分だったら困る難題を投げていいなんて、こんな贅沢なことないじゃないですか! なので、存分にその無茶ぶりを楽しませていただきました。

又吉:僕はどっちかというと、お題のバリエーションを多めにして、その中からヨシタケさんがピンとくるものがあればいいなと思いながら考えていました。

――基本的に普段はお一人で執筆されていると思いますが、共著だとまた違う面白さがあったのでは?

ヨシタケ:相手にお題を考えてもらっているので、「どう書こうかな?」と一行目を書いた時点で、すでに発想が一個走り始めている状況が作れるし、自分ではやらなかったであろうことができたのを毎回自分で確認できるのは楽しかったですね。看護師と力士の話(*「その本は、当時の読者の割合が『看護師になる人の10%、力士になった人の95%』でした」の回)なんて絶対に普段の自分では選ばないテーマだし、今回の機会がなかったら書けなかったと思います。

 前作の『その本は』を作る時も思っていたことですが、又吉さんと共著として作る以上、この2人で作っている意味みたいなのがそこに生まれてほしいし、普段の自分の本ではやらないようなことをお互いチャレンジできるようなものが企画になったらいいですねと話していたので、とても贅沢な経験でした。

又吉直樹

又吉:僕もヨシタケさんと一緒やからできることがいっぱいあったので、そこも楽しみながらやらせてもらいました。文学というよりも、作品によっては劇場でやっているコントや漫才のくだりっぽいことも文章でできたので、僕としてはすごく大きな変化だったし、新たな一歩を踏み出せたような感覚でした。

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