『SPY×FAMILY』ヨル・フォージャー ついに恋心を自覚!? “本当の夫婦”になる日は近いのか

■ヨルがロイドへの好意を自覚するまで
ヨルの心情がより明確になるのは、第44話から第56話で描かれた「豪華客船編」だ。同エピソードでは、ヨルが要人を護衛する任務に就くのだが、その胸には「なぜ自分は殺し屋を続けているのか」という疑念が兆す。すでに弟のユーリは独り立ちしているため、殺し屋稼業でお金を稼ぐ必要はないからだ。
そうした逡巡によってピンチに陥るヨルだったが、最終的には「大切な人たちの暮らしを守りたい」といった答えに辿り着く。その時脳裏にあったのは、フォージャー家の面々の顔だ。さらにはロイドが自分の仕事を肯定してくれた時の言葉を思い出し、戦う力へと変えるのだった。
こうしてヨルとロイドの関係を振り返ると、何か特別なきっかけで恋愛感情が芽生えたというより、徐々に好意を自覚していったようにも見える。あえて決定的な出来事を1つ挙げるなら、やはりヨルが偽装結婚を提案する理由となったパーティーでの一幕だろう。
ヨルにとってロイドは特殊で孤独な自分の生き方を受け入れてくれた初めての人だったが、一緒に暮らすなかでその存在が“守りたいもの”に変わっていったのではないだろうか。
ではその一方で、ロイドの側の心情はどうなっているのか。ヨルとは対照的に、元々ロイドは純粋に任務を円滑に進めるために偽装結婚を受け入れた。ただ、本人が考えているほど私情を捨てきれているわけでもない。
たとえばフィオナが初めてフォージャー家に訪問した際には、ロイドがヨルに対して向けた作り物の笑顔の裏に“微細な感情”が滲んでいるのを察知していた。また「豪華客船編」のラストでは、ロイドがフォージャー家を本当の家族として認識しつつあることを自覚する様子が描かれていた。
また第35話では、自分を膝枕して子守唄を歌っていたヨルに対して、母の姿を重ね合わせるという場面が登場。そしてロイドは妻らしい振る舞いができず落ち込んでいるヨルに向かって、「ヨルさんはもう立派にお母さんです」とやさしい声をかけていた。ロイドとしては、あくまで任務を継続するための言葉だったのかもしれないが、無自覚に本音を滲ませたやりとりとも受け取れる。
とはいえロイドの内面は今のところ鉄壁の自制心に閉ざされているため、何か大きな出来事がなければ、恋心を自覚することはなさそうだ。
第120話にてヨルはロイドへの想いをアーニャに打ち明けつつ、それを秘密にしておいてほしいと語っていた。もっと根本的なことを言えば、お互いに本当の正体を明かしてすらいない。2人が“本当の夫婦”になるには、まだまだ多くの課題を乗り越える必要があるのかもしれない。
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会






















