たこ焼きが値上がりしている件、タコはどう思ってるの? おすすめタコブック3選

おすすめタコブック3選

 日本人のソウルフード、たこ焼きが値上がりしている。その原因は、資源の枯渇や気候変動によるタコの価格高騰。また、世界的なタコ需要の増加も要因のひとつ。

可児弘明『カニ先生の タコペディアにっぽん』(岩波書店)

 あるたこ焼き屋は、コスト削減や価格据え置きのためタコをソーセージで代用。牛すじとこんにゃくを使ったラジオ焼きを導入する店も。さらに、何も入れないタコなしたこ焼きまで登場している。

 「意外とおいしい」「むしろこれが食べたかった」と歓迎の意見も見られるが、悲しむ声が大多数。庶民の味が、高級食材になろうとしている。

 かくも日本人はタコ好きだ。そしてタコを扱った本も意外と多い。読み出したら吸い付いて離れない、そんなおすすめのタコ本を3冊紹介する。

 近刊では、可児弘明『カニ先生の タコペディアにっぽん』(岩波書店)がある。

 浮世絵やクラーケン伝説など、美術や小説にもたびたび登場するタコ。その魅力に取りつかれた著者が、食文化だけでなく、文学、祭り、伝承、民話といった、古今東西のタコ談義をコレクションした一冊となっている。

吉田真明、滋野修一『タコ・イカが見ている世界』(創元社)

 吉田真明、滋野修一『タコ・イカが見ている世界』(創元社)は、タコの基本的な特性を説明しつつ、彼らの「知性」についてビジュアル付きで解説。

 「Chat GPTによく似たタコ」という項目もあり、最新の話題までカバーしている。また、タコの精神世界をゲノム解読から探るといった、タコ研究の最前線を知ることができる。

 近年話題となったピーター・ゴドフリー=スミス『タコの心身問題ーー頭足類から考える意識の起源』(夏目大 訳、みすず書房)もまた、タコの心に迫った本だ。

 著者は哲学者でありながら、練達のダイバー。海の中でタコと出会うと、彼らとの間で何かが通じ合った気分になるんだとか。このエピソードだけでも本書を開きたくなってしまう。

ピーター・ゴドフリー=スミス『タコの心身問題ーー頭足類から考える意識の起源』(夏目大 訳、みすず書房)

 著者はタコという不思議な生物の身体と心のあり方を通じて、人間の「意識」や「知性」とは何かを哲学的・科学的に問い直す。

 タコは脊椎を持たない無脊椎動物でありながら、極めて高い知性を持つ。

 迷路の学習、道具の使用、愛情表現など、人間や哺乳類に見られるような「考える行動」を多く示す。しかもその神経細胞(ニューロン)は、腕に分散して存在しているという。

 人間の神経系とはまったく異なる進化経路をたどって到達した、もうひとつの知性。著者はこのユニークな存在に向き合う中で、「自己とは何か」「意識はどこから来るのか」といった根源的な問いを、再び人間に突きつける。

 どの本も、タコの魅力をおもしろく伝えてくれる、おすすめのタコブックだ。ただし、読んだあとはせっかく買ったたこ焼きを口に運びづらくなるかもしれないが。

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