多摩動物公園で暮らすオランウータン「キュー」写真絵本が発売 故郷「ボルネオ島」の熱帯雨林の現状伝える

多摩動物公園で暮らす、日本に2頭しかいない野生出身のオランウータン「キュー」と、彼のふるさとであるボルネオ島の熱帯雨林の現状を伝える、写真絵本『キューのふるさとはボルネオの森』(偕成社)が、2025年5月12日に発売された。
「キュー」は、日本にいる野生出身のオランウータン2頭のうちの1頭であり、55年前に横浜港に入港した外国船の中で発見された。密猟の末、ボルネオから運ばれたと考えられており、以来日本で暮らしている。本書では、キューの物語を通して、野生動物が暮らす環境の変化と、その背景にある人間の営みに目を向けている。
著者の黒鳥英俊は、長年にわたり動物園で大型類人猿の飼育を担当してきた経験を持ち、現在は認定NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパンの理事として、環境保全と野生動物保護に取り組んでいる。彼が現地ボルネオを訪れた際に目にしたのは、熱帯雨林を伐採して広がるアブラヤシ農園の光景であった。アブラヤシから採れるパーム油は、加工食品や日用品に広く利用されているが、その生産拡大が熱帯雨林の破壊を招き、多くの生物が生息地を失っている。
本書では、同じNPOに所属する写真家・横塚眞己人が撮影した貴重な写真とともに、動物園で暮らすキューの姿からボルネオ島の現状、さらに黒鳥による環境保全活動の実際を伝える。読者に「知ることの大切さ」を訴えかける構成となっている。
著者の黒鳥英俊は1952年北海道函館市生まれ。上野動物園や多摩動物公園でゴリラやオランウータンの飼育を担当した後、NPO活動を通じて国内外で保全活動を展開している。著書に『オランウータンのジプシー』などがある。写真・構成を担当した横塚眞己人は1957年神奈川県横浜市生まれ。東南アジアを中心に熱帯雨林や環境問題をテーマに取材を続けており、子ども向けの写真絵本の制作にも精力的に取り組んでいる。
なお、2025年6月から8月にかけて、著者らによるトークイベントや講演会が都内や首都圏の動物園で予定されている。
書籍詳細
『キューのふるさとはボルネオの森』
文:黒鳥英俊
写真・構成:横塚眞己人
定価1,760円(税込)
判型:26cm×21cm
ページ数:40ページ
対象:小学校中学年から
発売日:2025年5月12日(月)