【漫画】子供の間違い、笑うと心の傷になる? 親の何気ない言葉の残酷さを描く『君を笑わない』

【漫画】子供の間違い、笑うと心の傷に?

自身の辛い体験がベース

――なぜ『君を笑わない』を制作したのですか?

南波:本作は2021年に制作した作品です。当時は息子の育児漫画を備忘録的に描いていたのですが、「自分が幼い時に嫌だったこと、息子にはしたくないことも忘れないように漫画にしておこう」と考えて制作しました。

——「前編」は過去の苦い体験談、「後編」は子どもの成長を見守りながらの語り、という構成でしたね。

南波:読者さんにも“子どものころの嫌な思い出”を体験してほしかった、あわよくば思い出してほしかったので、前編は子ども時代の思い出に絞って漫画を描きました。後編では当時を振り返っての感想、同じ立場になった上での共感、「今後どうしていきたいか」という見通しなど、主観的だった前編とは対照的に、客観的な視点で制作しています。後編を淡々と展開していくことで「この話は私の中では終わっていて、私の中でこんな風に整理してますよ」と、既に渦中ではないことを示唆しています。

――「後編」の“語り”のセリフ内容はどのように決めていったのですか?

南波:まず「でも」の使い所を大事にしてセリフを入れていきました。親として「可愛さを共有したい」ことに共感しつつ、自分がされて嫌だったことを明確にして、「大切な我が子に絶対そんなことはしない!」と明言したうえで、「でも」身内で、夫婦だけで、あなた(子ども)の成長を喜ばせてね。というように読んでもらえるようにセリフを選びました。

——ちなみにですが、本作は完全な実話なのですか?

南波:はい。これはほぼ実話です。設定的なところでフィクションが入っていますが、笑われた体験や自転車を練習している光景は実際に見たり体験したりしています。

——ほぼ実話であれば、「東京ってさ、外国じゃないの?」と聞いた後に笑われるシーンなどを描くのはかなりしんどかったのでは?

南波:思い出すのはやはりツラかったですね。それこそ自転車を練習している風景を見ている時に笑われたことを思い出したのは本当にしんどかったです。ただ、漫画にしていくと気持ちがドンドン整理され、描いている時はそこまでしんどくありませんでした。

安易に「可愛いから」で話すと子供は傷つく

——「東京ってさ、外国じゃないの?」と聞いた後の母親の笑い方がとても残酷に描かれていて、読んでいるこちらも身につまされる思いになりました。

南波:そのシーンは“辱められる”という恐ろしさを感じてもらえるように意識しながら描きました。わざわざ小声で話したのに、大声で周知したり、子どもの必死の抵抗を冗談めかして流したり、「何を言っても無駄な親なんだな」と感じてもらえるように表現しています。

——安易に「可愛いから」というだけで、子どもの“微笑ましい言動”を共有することの残酷さを感じる内容でした。改めて本作を通して伝えたかったことを教えてください。

南波:本作が“子どものことを他人に話す前に一度立ち止まって考えるキッカケ”になればと思っています。私がこの話で一番嫌だった点は、約束を破ってすぐに周知されたことです。約束を破ることはもちろん、東京から来た人に「この子は東京を外国だと思っています」と伝えられたことがとても嫌だったんです。だから、私としてはまず「これ子どもの前で話してもいいものかな?」、「他人に話してもいいのかな?」、「そもそもこれ面白い話かな?」という感じで、自分の言動を振り返ってみてほしいなと思います。

――そういった認識が広まると傷つく人も減りそうですね。

南波:そうですね。ただ、SNSは特に難しいですよね。この流れで考えてから投稿しても、いざ本人が大きくなって「これ投稿されてるの嫌だ」と言われたら、投稿を消せば良いだけの話ではないように思います。とはいえ、「備忘録として残しておきたいし…」という気持ちもわかります。私も「漫画にする時はよくよく考えて制作しないとな」と常々感じています。

――今後はどのように漫画制作を進めていく予定ですか?

南波:これからは実体験を元にした創作漫画を中心に活動していく予定です。現在『エセ科学で育ちました。』という漫画を「コミチ」や「LINEマンガインディーズ」などで自主連載しています。この漫画を書籍化、もしくはどこかで連載していただくことが今の夢です。

 また、漫画家として活動を始めたばかりなので、仕事も募集しています!広告漫画や商材漫画、漫画のネームや作画等も担当できますので、ぜひXのプロフィールからご依頼いただければと思います。

◼︎『エセ科学で育ちました。』:https://comici.jp/kwsk28/series/e4882291e61df

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