【漫画】不良の意外な一面にキュン ピュアで王道な少女漫画『気になるあの狼。』の甘酸っぱい魅力

【漫画】不良の意外な一面にキュン

ベタなテーマにした理由

――“本当は優しい不良男子とピュアな女子高生”というベタなテーマを選んだ理由は?

甘雲:ベタかつ自然体な作品が好きだからです。主人公はクセもなくてある意味どこにでもいそうな女の子ですが、そういう純真無垢な子が好きなので描きました。

――一方、荒野はなぜ描こうと思ったのですか?

甘雲:不良男子にしたのは、以前描いた作品に登場する男の子キャラが、太陽みたいなある種ギャップのない子だったので、少し違うテイストにしようと思ったことが背景にあります。ヤンキー漫画も好きでよく読んできたのですが、口は悪くても硬派なキャラが好きなので「そんな風に描けたら」と思って描きました。

――改めていろはと荒野の2人のビジュアルを描くうえで意識したことを教えてください。

甘雲:もともと「狼と羊」というテーマで作品を考えていたので、「羊みたいにふわふわした髪の毛の女の子と、ちょっといかつい見た目の男の子にしよう」と考えていました。いろははすぐ決まったのですが、荒野に関しては髪型で少し悩みました。個人的に男の子はベリーショートが好きなので最初は短髪だったのですが、髪が揺れるほうが作品の中では映えるので長くしました。

——ストーリー自体はどのように組み立てていきましたか?

甘雲:荒野の髪の毛がふわふわしているのが個人的に気に入っていて、最初に冒頭のカーテンといっしょに風になびくシーンが浮かんだので、そこから始めようと思いました。「描きたいストーリーがあった」というよりかは、笑顔だったり照れた顔だったりなど、「自分が描くのが好きなキャラの表情を魅力的に見せられる展開を入れよう」と思って作り上げていきました。

——飴がくるまれているフィルムに書かれているイラストの数の“迷信”が会話に出てくるなど、女子高生らしい会話が展開されていましたね。

甘雲:自分は高校を卒業して年月が経っているので、等身大の女子高生を描くことに苦労しました。本作を描くうえでは、担当編集さんと学生時代にあったことをあれこれ話す中で当時の記憶が芋づる式に蘇ってくることが多かったです。

「んな訳あるかぁ。」のカットでのこだわりは

——本作はとにかく「んな訳あるかぁ。」のカットが素敵でした。このカットを描く際にこだわったことは?

甘雲:私自身、男の子の柔らかいふにゃっとした笑顔がとても好きなんです。荒野が捨てられた子犬に対して少し笑っている様子を見たいろはの、「もう一度あの笑顔が見たい」と思う願いを叶えるためのシーンでもあったので、最初の笑顔よりさらに優しい屈託のない表情を意識して描きました。

——ちなみに甘雲さんが気に入っているカットは?

甘雲:先程の笑顔のシーンも気に入っています。あとは、いろはに「かわいい」と言われた後の照れた荒野の顔面アップのコマは絶対に描きたかったので、自画自賛ですが我ながら可愛く描けて満足です。他にも、背景の作画が苦手で毎回苦戦しているのですが、回想シーンのラストの、雨の中で子犬を連れて帰る荒野とそれを見ているいろはのカットは力を入れた分とても気に入っています。

——作画だけではなくワードセンスも光る内容でした。とりわけ「教室の一角の金色が今日もカーテンと同じリズムで揺れている」「雨上がりの放課後、教室の一角がいつにも増して眩しかった」など、地の文が印象的でした。

甘雲:作中で大々的に示してはいないのですが、いろはが文芸部という設定というのもあり、今回のモノローグは詩的というか、「小説の始まりのような言葉にしたい」と思っていました。冒頭の「教室の一角の~」シーンは頭の中で一番に画が浮かんでいたので、「それに合うモノローグはなんだろう?」と考えました。

――画から言葉を考えていったのですね。

甘雲:はい。2人だけの小さな世界を表すワードとして「教室の一角」を入れたかったのと、冒頭のモノローグがラストのモノローグと繋がっている構成がカッコイイと思っていたので取り入れてみました。

――今後甘雲さんの漫画制作の展望を教えてください。

甘雲:この2人の物語をベースに連載企画を練っていきたいです。世界観もキャラもとても気に入っているので、ここからブラッシュアップしてより多くの人に届けられるように、必ず連載を決めたいです。頑張ります。

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