【漫画】男子中学生の思春期丸出しバトルが勃発!? SNS漫画『なんもなくないだろ』が描く青春の一コマ

【漫画】部活に行きたくならないのはなぜ?


ーー本作を創作したきっかけを教えてください。

いえい:芸術系高校の卒業制作として何を作るか考えた際、自分は漫画を描きたいと思い本作を制作しました。

ーー吹奏楽部に所属する男子中学生の日常を描いた背景は?

いえい:私自身が中学時代、吹奏楽部に所属していた経験があり、部活動の空気感や人間関係をリアルに描けると思ったため、この舞台を選びました。登場人物を男子中学生にしたのは、男子同士の遠慮のないやりとりが好きだからです。

 ストレートにぶつかり合ったり、何気ないことで張り合ったりする彼らのやりとりには、微笑ましさと青春らしさが詰まっていると感じています。また中学生ならではの不器用さや未熟さを表現できるのも、この年代ならではの魅力だと思いました。

 彼らの日常を描いたのは、単純に私自身が日常系の作品が好きだからです。何気ない日常の中で生まれる小さなドラマや、くだらないやりとりの中にある青春の輝きを表現したいと思いました。

ーー筋トレしながら過ごす音楽室での一幕、すごく好きでした。

いえい:ありがとうございます。「仲がいいからこそ、どうでもいいことで張り合う」という男子中学生らしさを描きたかったので、楽しんでいただけたなら嬉しいです。周囲から見れば「何やってるんだ……?」という光景でも、本人たちは至って真剣に競い合っている……。そんな空気感が大好きです。

ーー本作を描くなかで印象に残っているシーンは?

いえい:本辺が虎田をかばった後、階段で「部活に来い」と伝えるシーンです。虎田が昼練をサボり、それが顧問にバレるところまでは考えていましたが、その後の展開は決めておらず、キャラクターたちの自然な流れに任せて描きました。

 本辺はただ慰めるのでもなく、強引に「来い」と押しつけるのでもなく、まず虎田自身に「どうしたいのか」を考えさせ、その答えを引き出してから助言する。彼のこの対応には、私自身も意外性を感じましたし、本辺の持つ優しさや的確さがよく表れているシーンだと思います。

ーー虎田くんの抱える心情から思春期らしさを感じました。

いえい:虎田を描くうえで意識したのは「高いプライドを持ちながらも、それを悟られたくない不器用さ」です。彼はダサい姿を見せるのを嫌い、さらに「プライドが高い」と思われること自体も避けたがります。そのため失敗するとヘラヘラとごまかし「そこまで本気じゃなかった」と取り繕うことが多いです。

 本辺はそんな虎田の本心を理解しているため、あえて深く踏み込まず、適度な距離感で接しています。その関係性が、虎田というキャラクターの魅力をより引き立てていると感じています。

ーー2人の関係・過去を描く際に意識したことは?

いえい:「互いを理解し、尊重しながらも、決して遠慮はしない関係」であることです。2人は表面的には反発し、言い争うことも多いですが、そのやりとりの裏には「互いを理解しているがゆえの安心感」があります。言葉ではぶつかり合っていても、根底には相手への信頼があるからこそ成立する関係です。

 またクライマックスで明かされる2人の過去では、虎田が軽く流すように「別に本気じゃない」という態度を取る一方で、本辺はその真意を理解しつつも真っ直ぐ応援しています。このやりとりを通じて、本辺が虎田の気持ちをしっかりと受け止め、尊重していることを表現しました。

ーー本作タイトル『なんもなくないだろ』に込めた思いを教えてください。

いえい:「成功や楽しさだけが青春じゃない」という思いを込めています。私が中学生だった頃、青春といえば「キラキラしていて、みんなとワイワイ楽しく、努力が実って最高!」というイメージがありました。でも実際は、勉強や友人関係、部活など、どれも大変で、思うようにいかないことも多かったように思います。

 努力が報われた人がいれば、その裏には虎田くんのように報われなかった人もいる。当時はそうした現実に苦しむこともありました。でも振り返ってみると、そうした苦しい経験も含めて「青春」だったんだなと思えるようになりました。だからこそ「成功や楽しさだけが青春じゃない」というメッセージを込めて、このタイトルをつけました。

ーー今後の活動について教えてください。

いえい:描きたいものを描き続けていけたらと思っています。描きたいものを見つけるために、いろんなものを見て、経験し、感じていきたいです。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる