『BADBOYS』『今日俺』『特攻の拓』令和の時代ではファンタジー? 往年のヤンキー漫画、人気再熱の理由

ヤンキー漫画人気の理由とは 

■あの名作が実写化される背景

  ヤンキー漫画の金字塔とされる伝説的な不良漫画『BADBOYS』(田中宏/著、少年画報社・ヤングキングコミックス/刊)が、2025年5月30日に実写映画化されることが決まった。同作は1988年~1996年にかけて「ヤングキング」で連載されていた漫画。たびたび映画化されてきたが、今回はグローバルボーイズグループJO1のメンバー・豆原一成が映画初主演を務めることもあって、話題を呼んでいる。

 令和の時代は、一時期途絶えていたヤンキー漫画が復活した時代と言ってもいいだろう。『東京卍リベンジャーズ』が爆発的なヒットとなったことは記憶に新しい。ファンがイベントで特攻服を身にまとうなど、かつての暴走族文化に注目が集まった。また、暴走族漫画の金字塔である『疾風伝説 特攻の拓』の単行本が復刻され、原画展が開催されるなど、往年の名作がクローズアップされる機会が増えた。加えて1988年に『増刊少年サンデー』で連載が開始された『今日から俺は!!』は、劇場版が2020年に公開。2024年9月には「金曜ロードショー」で地上波放送され、続編への期待が高まっており根強い人気を誇っている。

 今回映画化が決定した『BADBOYS』も、まさに80~90年代を代表するヤンキー漫画なのだが、令和の時代、なぜヤンキー漫画がウケているのだろうか。そもそも、かつてのようなヤンキーはほとんどいなくなった。暴走族はもはや昭和・平成レトロのイメージで語られることも多いような気がするのだが、若者になぜヤンキー漫画が響くのは、どういうことなのだろうか。憧れのようなものとは、違った感覚があるのかもしれない。

■ヤンキーが珍しいからこそヤンキーが人気

 これは逆説的といえるが、ヤンキーや暴走族が珍しくなったからこそ、ヤンキー漫画が受けるのではないか、という説がある。これは、リアルサウンドブックで以前にインタビューした『疾風伝説 特攻の拓』の漫画を担当した所十三も発言していたことである。何を隠そう、『特攻の拓』が連載されていた90年代、平成初期の時点ですら、暴走族の数は減少傾向にあったのである。

 ましてや今の時代、渋谷センター街では、漫画にあるようなヤンキー同士による殴り合いの喧嘩も滅多に見ない。窓ガラスを割られまくる学校もほぼなければ、土曜の夜に幹線道路沿いで暴走族に遭遇することはほとんどない。旧車會とよばれる暴走族OBの活動は一部で行われているが、それですらかつての規模とは比べ物にならない少数派といえる。

 つまり、若者はヤンキーや暴走族を一種のファンタジーとして見ているのだ。言ってしまえば、異世界物と近い感覚である。ヤンキーの世界という異世界を覗いている感覚で、漫画を読んでいる。身近ではない未知なる存在だからこそ、かえってキャラに共感しやすいし、感情移入しやすい部分があるのではないか。

 また、ヤンキー漫画が普遍的な魅力を持っているのは、少年漫画の王道といえる、仲間との友情、そして敵キャラとのバトルをしっかり描いている点にある。こうした男同士の友情、青春を濃密に描いた漫画は少なくなってきた。だからこそ、往年の名作が注目されやすくなったと言えるし、かつてのリアルタイムで読んでいたファンだけではなく、新たなファンも獲得し続けているといえるのではないだろうか。

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