【漫画】憧れの漫画家と初対面、編集者が取った行動は? エモい関係性を描いた『MIA』に共感

【漫画】推し作家を死ぬ気で支える編集者

――作品の反響はいかがですか?

鼓屋稀(以下、鼓屋):こちらは雑誌「ガンガンJOKER」に掲載された短編です。SNSは2回目の再掲ですが、定期的にポストするようになってから届く方の範囲が広がっているなと感じています。

 特に嬉しかったのは「カラー原稿を読んでいたつもりでもう一度見直したら、モノクロで驚いた」という感想。童話調なのとキャラクターの感情を前面に出した作品だったことが色がついて見えた理由なのかな、と考えていました。

――作家と編集者の関係を題材にしたのはなぜでしょう。

鼓屋:もともと私は二次創作のファンアートや同人誌を描いていて、たまにはオリジナル描こうと「コミティア」で自費出版したのが本作のプロトタイプだったんですよ。だから当時は編集さんにお世話になったことはなくて。むしろ編集者・犬塚君側に自分の「読みたい」という欲や作品への熱意を投影させたのが『MIA』。

 だから私にとって「MIA」というキャラクターは自分を支えてくれた好きな作品や物語、そして作ってくれた人に対する想いが混ざった抽象的な存在でした。そこに「それだけ待ってる人がいるんだよ」というメッセージを送りたかったんです。

――なるほど。では今になって作家側の心情も理解できたり?

鼓屋:そうですね。ようやく描く側の苦労がわかったといいますか……最近になって連載を始めてから「これは大変だ」と(笑)。

――制作期間も気になります。

鼓屋:当時はウェブデザイナーとして働いていたので、仕事が終わってから夜制作していたんです。同人誌版の方は1カ月くらい、雑誌版の方は編集部との打ち合わせ込みで3カ月ほどかかりました。

――ご自分にとって今『MIA』はどんな作品ですか。

鼓屋:今思うと自分のスタート地点的な作品ですね。コミティアの出張編集部で前任の編集さんが「面白いです」と言ってくれた時の感動は今でも覚えています。

 同じ作品を好きな人に向けて描いた作品ではなく、知らない人に面白いと思ってもらったのは初めてで。その時につい「もしかして漫画家になれるのかも!」と思い上がってしまったんですよ(笑)。

――現在連載中の『おむかえ月見ドール』についてもお聞かせください。

鼓屋:トラウマ持ちのドール好き大学生が、謎の呪いでドールになってしまった好きな先輩を助けるラブコメです。ふたりの恋愛だけでなく、自分の好きなものにどう向き合うのかという要素も描いていければ。

――単行本も発売されたばかりということで。

鼓屋:まだ自分が作家だという自覚が薄く、「本当に本になってる!」と驚きました(笑)。2年前は漫画家になるなんて思ってもいなかったので、若干他人事みたいになってますけど嬉しいです。

――最後に漫画家としての将来の展望を教えてください。

鼓屋:漫画以外のものを含めた「物語」に私は力をもらってきました。だから次は私がエネルギーを与えるような物語を描きたいです。それがたとえ圧倒や感動でなくても、誰かが落ち込んで帰ってきた時とかに元気を出して寝られた、とか少しでも影響を与えられたら。

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