注目俳優・柿澤勇人、舞台へのストイックな思い 1st写真集『untitled』と演者として心がけていること

■何かポジティブなものを持って帰ってもらいたい

ーー稽古や舞台の期間中というのは、かなりハードな日々でしょうか?

柿澤:そうですね。演出家や作品によっても全然違いますが、共通して言えるのはお客さんに「何かポジティブなものを持って帰ってもらいたい」ということです。高いチケット代、そして時間ももらっている。だからその間は感動もしてほしいし、楽しんでほしいんです。

 「面白くない」と言われたら、それまでです。それを決めるのは稽古期間。そこで勝負した成果しか、基本的には舞台の上にはのらない。本番だけ一生懸命頑張っても、どうにもならないんですよね。そういう意味でも、稽古期間というのは過酷ですよね。「これくらいでいいかな」という終わりはない。いいところまでいったとしても、さらに上があるんです。

  そして本番期間中は毎日同じことの繰り返しなので体が慣れてきてしまうこともあります。初日には尖ったものが、だんだん磨耗されてなあなあになってくる。ラクになってくる。でもラクをしたら、面白くなくなってしまう。だから本番が始まっても、やっぱりしんどいですね。

  自分で言うのも変ですが、稽古から舞台が全て終わるまでの間、本当に大変なことをやっていると思います。

ーー稽古や公演が連日あるような日々というのは、プロのアスリートのようなハードさがあるようにも思いました。

柿澤:自分でアスリートとは言いたくないですけど、近いとは思いますね。毎日、喉のケア、体のケア、心のケアをやっています。そして次の日もそのまた次の日も本番がある。(俳優の仕事は)周りから「好きなことだけやっているんでしょ」と思われがちですけど、「いやいや、大変なことをやっているんだよ!」と思ったりします(笑)。でもそれを“大変だ!”という風に見せたくもないですからね。

ーー写真集刊行にあたって「この1年間は怒涛のように駆け抜け、役者人生におけるターニングポイントとなる作品ばかりでした」とコメントしていました。『スクールオブロック』『オデッサ』『ハムレット』で主演を演じた1年間を、改めて振り返ってみるといかがですか?

 柿澤:大作が続いたので、今思えば本当によく耐えたな、よく走りきったなと思います。いつ倒れてもおかしくなかった。実際に倒れたこともありました。よく生き抜いたなと思います(笑)。

  この35、6歳でそれぞれの役に出会えたのは本当によかったです。あと5年早くてもできなかっただろうし、5年遅くても体がいうことをきかなかったかもしれない。いいタイミングでいい役と巡りあえたと思います。

ーーご自身で舞台裏の写真を見ると、いろいろな感情がこみ上げてきますか?

柿澤:そうですね。基本、大変です。作品によって全然違うつらさもあります。そしてその先にだけ見えるものもあります。写真集には、それが本当にそのまま表情になってのっていると思います。

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