新選組を題材にした漫画はなぜウケる? アニメ放送迫る最新の人気作『青のミブロ』の魅力に迫る

新選組を題材にした漫画はなぜウケる?

 本日、2024年10月19日(土)17時30分より、TVアニメ『青のミブロ』(読売テレビ・日本テレビ系)の放送が開始する。原作は、現在「週刊少年マガジン」にて連載中の安田剛士による人気コミック。

 物語の舞台は幕末の京都――主人公は、「ちりぬにお」という名の心優しき少年だ。

 甘味処「ちりぬ屋」の老婆に育てられた孤児・におは、ひょんなことから「壬生浪士組」(後の「新選組」)の土方歳三に認められ、同隊に入隊することに。におは土方にいう――「僕だって強くなりたい。こんな世界、変えたい」

 尊皇、攘夷、開国、佐幕、倒幕……さまざまな主義や思想が入り乱れる京の街で、「壬生浪(ミブロ)」と呼ばれる最強の剣客集団に加入した少年が、「変えたい」と願っている「世界」とはいかなるものなのだろうか。

新選組を題材にした漫画はなぜ受けるのか

 ところで、本作に限らず、新選組を題材にした漫画はことのほか多い。いま思いつくままにタイトルを挙げてみても、『新選組』(手塚治虫)、『劇画 近藤勇 星をつかみそこねる男』(水木しげる)、『風光る』(渡辺多恵子)、『あさぎ色の伝説』(和田慎二)、『新撰組異聞 PEACE MAKER』(黒乃奈々絵)、『壬生義士伝』(原作・浅田次郎、漫画・ながやす巧)、『ちるらん 新撰組鎮魂歌』(原作・梅村真也、漫画・橋本エイジ)など、いくつものヒット作、話題作がある。

 また、新選組の隊士が主人公ではないが、『お〜い!竜馬』(原作・武田鉄矢、作画・小山ゆう)、『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚』(和月伸宏)、『陸奥圓明流外伝 修羅の刻』(川原正敏)、『ゴールデンカムイ』(野田サトル)といった作品でも、同隊の隊士(および元隊士)が重要な役割を担って登場する(空知英秋『銀魂』では、「真選組」として登場する)。

 ことほどさように、日本の漫画界では昔から新選組が人気なわけだが、その理由は一体なんなのだろうか。

 1つは、“彼ら”が、実在の人物でありながら、漫画的な意味でも充分“キャラが立っている”ということが挙げられるだろう。武骨なリーダー、近藤勇。“鬼の副長”土方歳三。美貌の天才剣士、沖田総司。悲運の総長、山南敬助。破壊と混乱をもたらす“悪役”芹沢鴨。そして、斎藤一や永倉新八といった、激動の時代を生き抜いた漢(おとこ)たち――要するに、新選組の隊士たちは、そのまま漫画のキャラクターになりうる“個性”を持った人々なのだ(注・ただし、「美青年・沖田総司」のイメージは、後の世の作家たちが作り上げた虚像であるというのが定説)。

 また、現在の日本の漫画――とりわけ少年漫画の世界では、強烈な個性を持った1人のヒーローに焦点を当てるのではなく、複数の主役級のキャラクターたちをトーナメント戦、あるいはチーム戦で戦わせる「集団バトル物」が好まれる傾向にあり、ひとりひとりのキャラが立っている新選組(および、坂本龍馬をはじめとした彼らと敵対する側の面々)は、その種のジャンルの物語にも対応しうる恰好の素材であるということだ。

 さらには、いわゆるBL(ボーイズ・ラブ)的な視点を取り入れて、新選組を描いた作品も少なくない。こちらについては賛否両論あることだろうが、一定数以上の女性読者の支持を得ているというのも1つの事実である(誤解を恐れずにいわせていただければ、そもそも前述の少年漫画の「集団バトル物」にも、BL的な要素が全くないとはいえないのだ)。

「残酷な世界」で主人公が目の当たりにする“正義”と“悪”

 さて、『青のミブロ』に話を戻すが、なんといっても素晴らしいのは、主人公・ちりぬにおのキャラクター造形だろう。彼は常に真っ直ぐな視線で目の前にある「残酷な世界」を見つめ、時に傷つきながらも、その厳しい現実から目を逸らそうとはしない。

 また、前述のように、孤児として育ったにおは、そんな「世界を変えたい」と思っているのだが、果たしてそれはどのような世界なのか。

※以下、『青のミブロ』のストーリー展開(および歴史的事実)に触れています。同作を未読の方はご注意ください。(筆者)

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