唯一無二の漫画雑誌を作る3つの柱とは? 「ハルタ」編集長・塩出達也インタビュー

「ハルタ」編集長・塩出達也インタビュー

結果を出している編集者の共通点とは?

――ここからは漫画雑誌をめぐる現状と課題についてもお伺いできればと思います。今後、漫画雑誌はどうなっていくと考えていますか?

塩出:漫画の読者層で一番多いのは、スマートフォンで無料で読めるなら読む、くらいの温度感の人で、漫画雑誌を習慣的に買って読む人や、紙の単行本を本棚にずらっと並べている人はどんどん減っています。

 僕たちは紙での漫画出版にこだわりがあるので、この一番少なくなっていく層を維持したいし、出来ることなら増やしていきたい。そのために、紙で漫画を読まない人たちとも接点を作る必要があると思っています。裾野を拡げないと、紙で読んでくれる人も増えない。

 なので、僕たちは「ハルタオルタ」や「カドコミ」といったwebやアプリにも積極的に力を入れていきますし、作品を読んでもらえる機会をたくさん作りたい。まず読んでもらって、気に入った人が紙の本に辿り着いて、最終的に長く本棚に置いてもらえるように。そんな魅力のある作品、漫画雑誌を作るぞという気持ちでやっています。

 業界全体としては、音楽業界のようになっていくんだろうなと思っています。聴くだけなら配信サービスで聴いて、物として買うのであればより所有欲が満たされるレコードを買うみたいに……。漫画もどうせ紙で買うのなら、という感じでどんどん大判になって高額になっていくと思います。紙や輸送費の値上がりや部数の低下もあって値上げは避けられない状況です。

――今回お話を伺っていて、作家性を見抜くのはもちろん、作家に一つの型を提示するなど、改めて漫画編集者って独特な技術が求められる職業だなと感じました。

塩出:僕個人としては、漫画編集者は誰でもできる仕事だと思っています。漫画編集の技術にはある程度のセオリーがあって、WEBや書籍で公開されているので誰でも習得できます。

 結果を出している編集者に共通するのは、才能ではなく試行回数の多さです。漫画家を探す機会の数、漫画家と出会う数、作る漫画の数、それらが多い編集者が結果を出している。結果を出せない編集者は試行回数が足りないんです。

 数をこなすということは失敗も多く経験するということなので、失敗しても挫けず、原因を精査して次に向かっていく熱量を持ち続けられれば良い漫画編集者になれると思います。

■関連情報
「ハルタ」公式サイト
https://www.harta.jp/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「名物編集者」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる