【漫画】中学校の卒業式、幼馴染の男女が河川敷でなぜ“腕相撲”? 思春期の揺れ動く感情を活写した『河川敷レトロ』
ーー本作を創作したきっかけを教えてください。
どんどこすすむ:私が通っている「ひらめきマンガ教室」の課題で“肉体的接触”をテーマにした16ページの作品を制作することなり、本作を創作しました。このお話は以前から40ページくらいの読み切り作品として描こうと思っていたのですが、途中で描くことを辞めており……。そんななか課題ではページ数を凝縮してつくり直したという経緯があります。
本作は自分の小・中学生の体験として、半分くらいは実話が元になっています。作中に登場するアケミのように、力の強い幼なじみの女の子がいたのですが、まさに中学3年生のときに河川敷で腕相撲をしたら、思いがけず彼女に勝っちゃったんです。そのときの思い出が印象に残っていたので、漫画にできないかと思っていました。
ーー実話がもととなっていることに驚きました。
どんどこすすむ:ガキ大将の子に胸ぐらをつかまれるシーンも、幼馴染の女の子が助けに来るシーンも、実際にあったエピソードです。ただ作中ではガキ大将の子の腕を掴むシーンまで描いたのですが、実際はそのあと彼女が男の子をボコボコにしちゃって……。
ーー本作を描くなかで印象に残っているシーンは?
どんどこすすむ:小学生のころの回想シーンにて、河川敷の高架下でケン坊が絡まれるシーンです。地べたに置かれたランドセルなどの構図、高架下の暗い雰囲気など、自分が思っていた以上にうまく描けたのでちょっと気に入ってます。
ーーアケミさんが掴んだ、ガキ大将の男の子の肉々しい腕の描写が印象に残っています。
どんどこすすむ:ここはラストの2人で腕相撲をするシーンの振りにもなるカットなので、冒頭の卒業式でケン坊を引き止めるシーンも含め、序盤ではアケミの怪力さを描きたいと思っていました。
ーー「大人になんかなりたくないよ」とこぼすなかで、たしかに手がつながれる、本作のクライマックスに込めた思いを教えてください。
どんどこすすむ:ケン坊もですが、とくにアケミは男子に告白されたりなど、自分や自分の周りが急激に変わっていく様子を感じていたのだと思います。
自分の身体や、周りが成長していく速度に気持ちが追いついてない。ケン坊とじゃれ合うなかで小学生のころのなつかしさを感じつつも、腕相撲でケン坊に負けてしまうことで自分たちが変わっていく状況を受け入れざるを得なくなってしまったーー。
大人の入口に来てしまったことを知る喪失感とか、ケン坊への思いなど、さまざまな感情が入り混じった心情を意識しながら最後のページを描きました。
ーー漫画を描きはじめたきっかけは?
どんどこすすむ:こどもの頃は『週刊少年ジャンプ』を読んだり、ノートに漫画を描いたり、描いた漫画を友だちと見せ合ったりしていました。中学生くらいから「漫画家になりたいな」と思うようになり、地元の美大へ進学したのですが中退してーー。そのあと就職したり、結婚をしてこどもが生まれたりと、忙しい生活を送っていました。
ただ、その間でも漫画家になりたいという夢が心の中にあって、会社員時代もペンタブレットを購入して、インターネットの掲示板に落描きを投稿していました。そんななか2年程前に思い切って会社を辞めて、本格的に漫画を描きはじめました。
そのとき初めて38ページの読み切り漫画を描いたのですが、漫画の描き方がわからず、かなり苦しみながら3カ月かかって漫画を描き上げました。そのときの苦労から1人で漫画を描きつづけることは厳しいと思い、漫画の学校に入会しながら現在も漫画を描きつづけています。
ーー漫画を描きつづけるモチベーションは?
どんどこすすむ:読者の方に楽しく読んでもらえることが1番のモチベーションであり、読んだ人が作品を面白がってくれると嬉しいです。時間つぶしでもいいですし、一瞬でもつらい現実を忘れられるといったことでも構いません。漫画制作は作品を通じて他者とつながることができる手段だと感じています。
ーー今後の目標を教えてください。
どんどこすすむ:大きな目標として漫画で収入を得て、漫画を描くことだけで生活できるようになりたいです。先日、商業媒体の編集者さんからお声がけいただいたので、当面は商業デビューすることを目指しています。