「GLAY」30周年記念ブックはどうつくられた?ーークリエイティブディレクター清水恵介が語る制作秘話
■大ボリュームの超保存版
「GLAY CREATIVE COLLECTION 1994-2024」は、1994年から2024年までの30年間に発表されたGLAYの全シングル・アルバムのCDジャケット、ミュージックビデオのクリエイターに取材し、コンセプトやテーマ、制作秘話なども収められた書籍である。
リアルサウンドブックでは表紙、巻頭のために撮り下ろされた写真のディレクションとデザインを手がけたクリエイティブ・ディレクターの清水恵介氏にインタビュー。書籍の編集を担当した善積幸子氏(玄光社)にも参加してもらい、GLAYのビジュアル、アートワークや同書が生まれた経緯、制作の裏側について語り合ってもらった。
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——まずは「GLAY CREATIVE COLLECTION 1994-2024」の企画を立ち上げた経緯を教えてもらえますか?
善積:中学生のときにGLAYのファンになったんですが、「BEAUTIFUL DREAMER」をライブで歌うたびにTERUさんが「夢見て生きていこうぜ」と叫ぶんです。そのときから「GLAYと仕事をする」ということを自分の夢にしていたんです。
もともとはフォトグラファーを目指していて、スタジオで働いていたこともあったんですが、その後、雑誌「コマーシャル・フォト」の編集者になって。GLAYの30周年のタイミングで本を作ることを目指して、5〜6年前から企画をしたためていたんです。 GLAYのライブ撮影を行っている岡田祐介さんの写真集(「Penguin Being-今日もペンギン-」)のあとがきにTAKUROさんからメッセージをいただいたことでご縁ができ、企画を持ち込みました。2020年くらいに持ち込んだときは気が早すぎましたが(笑)その後も時期を見て何度かご提案し、実現に至りました。
清水:そんな経緯があったのは知りませんでした。すごいですね。
善積:ありがとうございます(笑)。自分がクリエイターを目指して挫折した経験もあったからこそ「クリエイターのみなさんのお話を聞きたい」という想いもずっとあったんですよ。GLAYがカッコいいのは当然なんですが、それを支えてきたクリエイターの方々がどんな思いで関わっていらっしゃったのかを知りたくて。
■GLAYの様々なアートデザインに関わる
——清水さんとGLAYの出会いは?
清水:(クリエイティブディレクターをつとめる)YouTubeコンテンツ「THE FIRST TAKE」ですね。2021年11月にGLAYのみなさんが出演してくれたのですが、そのときの写真を「今のGLAYが映っている」と気に入ってくださって。そのあとシングル「Only One,Only You」のジャケットのアートワーク、プレミアム・モルツのGLAYデザイン缶、30周年のアーティストビジュアルなども担当させていただきました。
善積:「Only One〜」のジャケットは私も本当に好きで。手に取りたくなって、何度も見たくなるアートワークだと思っていましたし、GLAYサイドから「GLAY CREATIVE COLLECTION」の表紙の撮影を清水さんと(フォトグラファーの)長山一樹さんにお願いしたいという提案をいただいたのは、こちらとしても願ってもないことでした。
清水:僕もデビュー当初からGLAYの音楽を聴いていましたし、じつは長山さんもGLAYのファンだったみたいで。全員にとって憧れのアーティストだったんですよね。
——清水さんがGLAYのアートディレクションを手がけるときに意識していることは?
清水:僕と長山さんがいつも話しているのは、「本物のアーティスト写真を撮りたい」ということなんです。特にGLAYは、メンバーの4人がそこにいるだけで圧倒的だし、すごい存在感がある。こちらからポージングや表情を指定するのではなく、スッと立っていてて、肩の力や顔の力を抜いた自然な写真を撮りたいと思っていました。もしかしたらメンバーのみなさんも、そのスタンスを気に入ってくれているのかもしれないです。「only one〜」のCDジャケットも、演出過多にならないように自然体のGLAYを見せたいと思っていました。
ドキュメンタリー性やポートレート的なところもあるんですが、パフォーマンスや写真もそうですけど、音楽を“残す”というのが僕の仕事なのかなと思っているんですよ。デザインにも余白を残して、GLAYのみなさんの人間性が伝わるようなものが作りたいなと。あのときはリモートで打ち合わせをしたんですが、「TAKUROの曲だから、TAKUROのイメージを伝えたほうがいい」とほかの3人が仰っていたんです。主に僕とTAKUROさんが話して、TERUさん、JIROさん、HISASHIさんはずっと聞いているという。
善積:みなさん同席はされるんですね。
清水:そうなんですよ。打ち合わせは、その時によってメンバーのどなたかがリーダーシップを取っているようですが、全員で話して最終決定することを大事にされているんだと思います。
■表紙デザインの制作経緯
——それもメンバー間の信頼関係につながっているのかも。「GLAY CREATIVE COLLECTION 1994-2024」の表紙の写真についてもお聞きしたいのですが、善積さんから「こういう写真がいい」というオーダーはあったんでしょうか?
善積:表紙の写真に関しては清水さん、長山さんにお任せしていました。じつは30周年のアーティスト写真と同じタイミングで撮影したんですよ。30周年のアーティスト写真を清水さん、長山さんが担当されるのはもともと決まっていて、そのタイミングで本のカバーを撮り下ろす時間をいただいて。本の表紙で使わせていただいている写真も、もともとは30周年のビジュアルにするという想定だったんですよ。
清水:そうなんですよね。30周年の写真については、TERUさんのほうから「30周年はお祭りだから、みんなで盛り上がるイメージいしたい」というお話があって。具体的には背景を明るくして、コントラストも強く出したいと。
——なるほど。本の表紙はゴールドをバックにしたビンテージ感のある写真ですね。
清水:はい。30周年の重みだったり、“本物であることの強さ”をどう写真に収めるかということを考えたときに、ゴールドのイメージだなと。そのなかにフレッシュも感じられるような写真にしたい、みたいなことを長山さんともいろいろと話をして。そのなかで出てきたのが三角壁を使うことだったんです。
アーヴィング・ペン(※)がポートレート写真を撮るときに使った手法なんですが、狭い空間のなかで撮ったほうが、その人が持っているものが出やすいんですよね。壁に手をつくのか、もたれかかるのかもそうですけど、その人らしい自然なポージングが引き出せるんじゃないかなと。(※アーヴィング・ペン/1917年〜2009年 アメリカの写真家。被写体を小さい空間のなかで撮影するポートレートで知られる)
善積:清水さんが仰るように、すごく自然な表情が収められていると思います。4人で撮るときはバックの壁を開いて、ソロ写真ときは閉じ気味にするんですけど、いろいろな使い方ができるのも面白くて。
清水:そうですよね。シンプルな写真だからこそ、ディテールにはものすごくこだわりました。ルーフトップが少し開いているスタジオだったので、自然光を活かしつつ、少しだけ補助的なライトを入れて。複雑なライティングになればなるほど、演出的なところが強くなっていくしーーもちろんそういう方法が有効な場合もあるのですがーー今のGLAYはやはり、自然な光りのなかでスッと存在している姿を撮りたかったんですよね。ゴールドの色合いと壁の統一感にも気を使いました。「壁の漆喰をどれくらい塗り重ねるか」といったことも長山さんと何度もやり取りしましたし、あとは床ですね。ツルツルでもなく、偽物でもなく、しっかり年月を積み重ねてきたコンクリートの表情みたいなものも写真の質感にとってはとても大事な要素だったので。
■GLAYメンバーの手のアップが掲載された経緯は?
——そこまでこだわっているんですね
善積:すごいですよね。ゴールドの色合い、壁、床の質感もそうですけど、アートディレクターとフォトグラファーがピタっとハマることの大切さを実感しました。それが作品全体の強さにつながるんだなと。
清水:ありがとうございます。僕と長山さんは自然なものが好きなんですよ。最初はビンテージ家具から入って、そこから木、土、石に興味を持つようになったんですけど、自然って人の手ではコントロールできないじゃないですか。ディレクションをしていて「予定調和にしたくない」と思ったときも自然の力を借りたくなるんですよね。今回の表紙の写真もそうで、ライティングや床、壁なども自然であることを意識していました。
——「GLAY CREATIVE COLLECTION 1994-2024」の表紙、巻頭の写真に対するGLAYのみなさんの反応はどうでしたか?
善積:もちろんメンバーのみなさんにも確認していただいたんですが、びっくりするくらいすぐに「OKです」というお返事があって。清水さん、長山さんのお仕事を本当に信頼されているんだなと思いましたね。
清水:よかった。巻頭は30ページ以上あって、写真の点数もかなり多いんですが、すぐにOKをいただいて。……写真集を作りたくなりますね(笑)。
善積:本当に(笑)。メンバーの手のアップも掲載しているんですが、それは私がお願いして撮っていただきました。顔が映っている写真はたくさんあるんですが、手のアップはあまり見たことがないし、そこにもメンバーのみなさんの生き方が出ていると思ったので。
清水:撮影のときの様子にもメンバーそれぞれの個性が出てましたね。JIROさんはめちゃくちゃカメラがお好きじゃないですか。「THE FIRST TAKE」の撮影もそうだったんですけど、長山さんが使ってるカメラやレンズを見て、「これで撮ってるんですね」みたいな話をしていて。
善積:TERUさん、JIROさんはしっかりモニターを確認していらっしゃいましたよね。TAKUROさんは少し後ろからチェックされていて、HISASHIさんはヘアメイクの谷崎さんやスタイリストの坂﨑さんとにこやかにお話しされていました(笑)。お二人を信頼しているのは共通していると思うんですけど、撮影時のスタンスにも個性が出るなと思いました。
■GLAYのビジュアルの変遷が一冊に
——「GLAY CREATIVE COLLECTION 1994-2024」は、GLAYのアートワークやMVの遍歴を辿ることができる書籍でもあると思います。GLAYのビジュアルの変遷について、清水さんはどう感じていますか?
清水:1人のアートディレクターとして思うのは、写真や映像でも時代を作ってきたバンドなんだなと。たとえばデザインや写真の色補正などもそうなんですが、順を追って見ていくと、トレンドみたいなものを感じるんですよ。昔は光を飛ばすのが主流で、コントラストも強めなものが多くて。
そこから機材の進化とともに写真の解像度が上がっていくわけですが、音楽と同様、ビジュアルでも歴史の流れがあるんだなと。トレンドを無視しているわけではなく、今の時代の解像度感は意識していて。ただ、やろうとしてるのはクラシックなことなんですよね。たとえばビートルズのアルバムのジャケットだったり、それくらいの普遍性があるものを作りたいと思っていたので。
——普遍性と新しさを共存させる、と。
清水:はい。あとは先ほどもお話しした“演出過多にしない”ということですね。今は嘘に敏感な時代だと思っていて。たとえばSNSなどを見ていても、「これは嘘っぽいな」と気にするじゃないですか? そういう時代からこそ、どうリアリティを伝えていくかが大事になってくると思うんですよ。GLAYのCDジャケットや今回の表紙の写真でも、そのことはかなり意識していました。僕自身のスタンスとしても、ドキュメンタリー的な部分を大事にしているので。
——確かにGLAYのライブを観ていても、しっかり演出された部分もあれば、メンバーの人柄が感じられるところもあって。そのバランスが絶妙だし、ファンのみなさんを惹きつけている部分なのかなと。
清水:演出されたものとドキュメンタリー的な部分の間にこそ、みなさんがゾクッとするような瞬間があるのかなと。器でいうと縁(ふち)、外側と内側の境目をどう表現するかも重要だと思います。GLAYのみなさんがやっていることもそうだと思うし、僕らはそのパートの一つを担わせてもらって。
——善積さんも編集者として大きな手ごたえを感じているのでは?
善積:本を作って感じたのは、「30年を振り返らせてもらえるのは、すごいことだな」と。アーティストによっては「過去のことは掘り下げないでほしい」「今やっていることがすべてです」という方もいらっしゃると思うんです。その考え方もすごくわかるのですが、GLAYのみなさんは「すべて載せていいです」と仰ってくれて。これまでの作品に対しても、一緒に作ってきたクリエイターの方へのリスペクトもすごくあるんですよね。
清水:本のなかにはクリエイターのみなさんからのコメントも載っていますが、どなたもGLAYに対する感謝を書いていらっしゃって。それもGLAYの4人がクリエイターへのリクエストを持って仕事をしてきたからだと思います。
善積:みなさん「GLAYのためならなんでも協力します」と口を揃えて言ってくださったのも嬉しかったです。そうしたクリエイターの方々のお話やを通して、よりいっそうGLAYのことが大好きになりました。
■本書概要
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