星渉、山口貴大、深田彩乃が推薦! 『金持ち父さん 貧乏父さん』が今なお「お金の教科書」として有益な理由
2024年1月から新NISA制度がスタートするなどして、人々の投資への関心や意欲が高まる中、改めて注目されている書籍がある。1997年にアメリカで刊行され、日本では2000年に翻訳されたロバート・キヨサキによる名著『金持ち父さん 貧乏父さん』(筑摩書房)だ。全世界シリーズ累計4000万部、日本シリーズ累計410万部を突破する大ベストセラーであり、一番最初に読むべき「お金の教科書」として、今なお多くの人々に支持される一冊である。現在では『改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』をはじめとしたシリーズが刊行されており、同書に学んで資産を築き上げた人々の口コミで、さらにその輪が広がっているのだという。
リアルサウンド ブックでは、『神時間力』(飛鳥新社)などで知られる連続ベストセラー作家でありビジネスコンサルタントの星渉氏、『【新NISA完全攻略】月5万円から始める「リアルすぎる」1億円の作り方』(KADOKAWA)の著者であり投資系YouTuberとしても活動するライオン兄さんこと山口貴大氏、そして『投資女子 自由に、可愛く、リッチに生きる』(ダイヤモンド社)の著者で女性向け投資スクール【ヴィーナスマネークラブ】代表の深田彩乃氏にインタビュー。三氏ともに、もともとは普通の勤め人だったのが、今や自ら著作を発表するほどの成功を収めているが、その根底には同書の教えがあったという。それぞれの『金持ち父さん 貧乏父さん』との出会いと、そこから学んだ知恵を語ってもらった。
星渉「視野を広げることの大切さを教えてくれる」
一番最初に『金持ち父さん 貧乏父さん』を読んだのは、高校三年生の頃です。当時は珍しかった、起業家を輩出しようとしている大学を第一志望にしていたので、その二次試験の対策として経済や投資についての知識を得ようと思って手に取りました。残念ながらその大学は落ちてしまったんですけれど(笑)、本書を読んでお金の知識に対する興味はいっそう高まりました。
高校生だったので、今ほど理解はできていませんでしたが、損益計算書や貸借対象表の見方が書いてあったり、良い学校を出てサラリーマンになる以外にも生活していく道はあるという考え方が、すごく新鮮だったのを覚えています。特に、ロバート・キヨサキさんが提唱している「キャッシュフロー・クワドラント」(※編注『改訂版 金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント : 経済的自由があなたのものになる』に詳しい)には影響を受けました。
「キャッシュフロー・クワドラント」は、人々のお金の稼ぎ方には「従業員」「ビジネスオーナー」「自営業者」「投資家」の4つがあるという考え方で、私自身もこの考え方によって人生の可能性を大きく広げることができたと思います。当時はスマートフォンもなく、情報が得にくい時代だったので、資産家がどうやって資産を築くのかを知ることはなかなかできませんでした。良い会社に入って高い給料をもらう、もしくは自営業者になって成功するくらいしかお金持ちになるイメージができなかったのが、『金持ち父さん 貧乏父さん』を読んだことによって視野が広がりました。
よく、「頑張って成果を出しても給料が上がらない」とぼやくサラリーマンの方がいらっしゃいます。私自身がまさにそうだったんですけれど(笑)、「キャッシュフロー・クワドラント」を知っていれば、お金の流動を踏まえて稼ぐ領域を変えなければ、結局のところ入ってくるお金の総量は大して変わらないということに気づくことができます。従業員をしながら投資家になったり、あるいは従業員でありながらビジネスオーナーになるということも可能で、そういう風に視野を広げることの大切さを本シリーズは教えてくれます。
また、今現在勤めている方におすすめの読み方としては、“メンタルを鍛える一冊”として捉えるのも良いと思います。162ページに「第六の教え」として「お金のためではなく学ぶために働く」と記されていますが、これはすごく良い考え方ですよね。この章では、多くの人がお金を得るために持っている唯一の技術が「一生懸命働くこと」だけであるとして、だからこそ成功するのが難しいと説いています。たとえば良い記事を書くことができる記者が、そのまま頑張り続けることでベストセラー作家を目指すのはかなりハードルが高いでしょう。しかし、その才能のみで稼ごうとするのではなく、セールスやマーケティングを学んでより多くの人に届ける能力を身につければ、ベストセラー作家への道はグッと近づきます。従業員として働くのも、経営者の考え方を知ったり、専門的な技術を学んだりするには有益ですし、そう考えると心の持ちようも変わってくるのではないかと思います。
私自身、決してすごく勉強ができたわけじゃなかったので、『金持ち父さん 貧乏父さん』の「才能だけでは成功しない」という教えは、むしろ救いになりました。突出した何かを持っているわけではないものの、自営業者や投資家として収入を分散させつつ、いろんな分野で学びを得ながら人生を豊かにしていける。今なお『金持ち父さん 貧乏父さん』が読まれ続けているのは、そういう古びない考え方が書かれているからだと思います。私も著作者として、本書のように長く読まれて人々の役に立つような一冊を書いていきたいです。
山口貴大「もっとも大切な資産は“頭脳”」
『金持ち父さん 貧乏父さん』は2000年代の初頭、高校卒業後に情報処理の専門学校に通っていた頃に、知り合いの美容師に勧められて読みました。当時は今ほど深く理解できていなかったものの、広く共有されていた価値観ーー勉強して良い大学に入って、良い会社に就職して、マイホームを手に入れるのが幸せな人生だーーに対して、まったく違う考え方を提示しているのに大きな衝撃を受けたのを覚えています。
『金持ち父さん 貧乏父さん』の教えをごく簡単に言うと、「自分のポケットにお金を入れてくれるものが“資産”で、自分のポケットからお金を抜いていくのが“負債”なので、“資産”を増やしていくべき」というものなのですが、そう考えると多くの人が欲しがるマイホームは“負債”であるとしているんですね。一方で、借金には悪い借金だけではなく、良い借金もあるという考えも目から鱗でした。単なる浪費としての借金はもちろん良くないけれど、プラスのキャッシュフローを生み出す借金はむしろ良いものであると。投資の基本的なマインドを知ることができたのも収穫でした。
私は「Financial Free Collage」というマネースクールを経営しているのですが、そこで発信している金融思想の根本も『金持ち父さん 貧乏父さん』と共通しています。今回、改めて読み直して、特に大切だと思ったのは67ページに記されている「金持ちはお金が単なる幻想にすぎないことを知っている」「お金は馬の目の前にぶら下げられたニンジンそのもの」「何十億という人が、この幻想にすぎないお金を実体のある『本物』と信じているのは、恐怖と欲望のせいだ」という教えです。まさにその通りで、私のマネースクールに来る方の多くも「お金がたくさん欲しい」とか「FIREしたい」とか「お金さえあれば人生への不安がすべて無くなる」という風に考えがちなのですが、その根底には恐怖と欲望があります。そもそも円というのは日本銀行が信用創造しているものでしかなくて、信用がなくなれば価値も消えてしまうもの。その前提に立つと、大切なのはお金そのものではなく、金融リテラシーを養って、お金に対する恐怖や欲望をなくすことなんだとわかります。金融リテラシーが高まれば、お金に対する正しい認識を持つことができますし、結果として資産は増えていくものです。つまり、もっとも大切な資産は“頭脳”だということです。
本書の教えは今なお有効なもので、経済的に豊かになるための根本的なマインドセットが書かれています。「一番最初に読むお金の本」としてはもちろんですが、何度も繰り返して読むことをおすすめしたいです。私自身、20年前にはわからなかったことが、今読むとすごく腑に落ちる教えもたくさんありますし、読み返すたびに成長を実感することもできます。実際、最近の取り引きでも『金持ち父さん 貧乏父さん』の教えを思い出し、考えを改めました。
もう一つ、本書の中で紹介されている、ロバート・キヨサキさんが考案したボードゲーム「キャッシュフロー」もおすすめです。私は妹とこのゲームをすることで、お金に働いてもらう方法を肌感覚で覚えることができました。まずは本書を読んで、ゲームでシミュレーションすることから始めてみるのも良いかもしれません。