【漫画】仕事に憂鬱な問題を抱えた休日、何も楽しめない気分で海へーー社会人のリアルな1日を描くSNS漫画
ーー創作のきっかけを教えてください。
夕暮宇宙船:本作で描いた1日は自分にとって印象的な日でした。その日を漫画にしようと思いネーム(設計図のようなラフ画)は早い段階で描き上げたのですが、いざペン入れをしようとすると忙しさから腰が重くなり……。また当時の画力は拙く、目に映った景色を表現する自信がなかったこともあり、実際に描き上げたのは約1年後となってしまいました。
ーー本作の1日を漫画で残そうとした思いは?
夕暮宇宙船:個人的な1日の出来事を描いても読者に伝わるのか、自分の絵でこの日の景色や出来事を伝えられるのか、不安でした。ただ、そんな気持ちを超える、この日を漫画として描き、この日を残した方がいいなという思いもありました。
そんな思いから描いた本作を完成させ友人に見せると、思っていた以上によい反応が返ってきてうれしかったです。そのあと他の短編作品を含め1冊にまとめた書籍を販売した際、本作への感想が最も多く驚きました。
ーー印象に残っているシーンは?
夕暮宇宙船:海に夕日が沈んでいくシーンです。自分はやりたくない仕事で忙しいときや、人間関係で悩んでいるときには脳が圧迫され、よいことが浮かばなくなってしまいます。この日から本作を描くに至った1年間も脳が圧迫されていたのですが、とある日の帰り道の最中、好きな曲を聴いていると羽を広げた鳥のような雲が目に入りました。
この作品を描くにあたり、ライブと海を交互に見ている場面をどう描こうか悩んで、夕焼けの似合うバンドだからこそ、当時の空気感を風景だけで表そうと決めてはいました。ただ、その雲を見たとき、スマホが空に透けている情景がパッと浮かび、このような絵になりました。
ーー夕日が沈んだあと、とある家族の会話が描かれた1ページが印象に残っています。
夕暮宇宙船:このシーンは実際に目にした光景でした。会話をしている2人が出会い、子どもが生まれ、再び同じ場所に立つーー。会話を聴いていた自分はその家族が立ち去ったあともしばらくその場から動けず、その出来事を嚙みしめていました。
そのときの体験を漫画で表現する際、言葉で表現しなくても当時の気持ちが読者に伝わると思い、このシーンではモノローグを入れませんでした。
ーー漫画を描きはじめたきっかけは?
夕暮宇宙船:コロナウィルスの影響による休業がきっかけです。こどものころは漫画家になりたいと思い、夢中で絵や漫画を描いていました。しかし大人になっていくにつれて、その気持ちが失われてしまい……。
漫画を描きたいという気持ちはその程度だったのかと思っていましたが、ライブハウスに通ったり映画を見たり、本作に登場したバンドが主催するイベントに参加するなかで、今まで失われていた気持ちが湧いてきました。
そんななか2020年の春にコロナウィルスの影響から仕事が休みとなり、ふと漫画を描いてみようと思って短いエッセイ漫画を描きました。描いた作品を友人に見せると褒めてもらえて。それから現在に至るまでマイペースに描きつづけています。
ーー本作はデジタルツールではなく、紙とペンで描いた?
夕暮宇宙船:はい、本作は紙とペンだけで描きました。現在はデジタルツールを併用しながら創作しています。
ーー紙とペンで漫画を描くことの魅力は?
夕暮宇宙船:デジタルツールは手軽に描き直しをすることができ、非常に便利です。ただ紙とペンで絵を描くと手軽に描き直せない緊張感を味わうことができ「絵を描いている」という実感や楽しさを覚えます。
また紙とペンで描かれている作品を見ると、絵から情報量の多さを感じて「すごいな」と感じます。そのため現在は線画では紙とペンを使い、細かな修正などではデジタルツールを用いています。
ーー今後の活動について教えてください。
夕暮宇宙船:漫画を描くことは自分にとってこどものころのように何かに夢中になれる大切なものなので、これだけは失いたくないという思いが強いです。外からの評価的に、また内面的にうまくいかなくなっても、これからも続けていきたいと思います。
自分の描きたいものは常に変化していきますが、人生を歩むなかで思ったことを記録として漫画で残していきたいです。また現在は民俗学や野生動物に興味があるので、これらを題材にした漫画も描いてみたいと思っています。