【漫画】ニンジンが大好きな「うさばに」が考えさせる社会問題 愛らしくも示唆に富んだSNS漫画が深い
ーー創作のきっかけを教えてください。
メガネ学専攻:これまで二次創作の作品を制作しSNSに投稿していました。ただ制作をつづけるなかで自分の好きなかわいい世界を通して、自分の考えを自由に表現してみたいと考えるようになりました。周囲の人に相談すると「ぜひ描いた方がいいよ」と背中を押してくれて。そのあとにコミティア(一次創作物の即売会)に申し込み、イベントに合わせて本作を描き上げました。
ーーメガネ学専攻さんの描きたかったものとは?
メガネ学専攻:社会とのギャップ・障壁についてです。周りに社会との障壁を感じている友人が多く、私も生きづらさを感じるときがあるーー。そういった社会との障壁を私なりの視点で描くことは二次創作ではむずかしい。しかし描くことに意義があると思い、本作を描くことに挑戦しました。
ーー社会とのギャップに悩むキャラクターを描くなかで意識したことは?
メガネ学専攻:困りごとを持ってる人たちが誰かの手によって助けられるのではなく、その人たちが自分なりのやり方で、自分で何とかしたいという願望をもつ能動的な姿を描きたいと考えていました。
社会との障壁に関する問題に焦点が当たることもありますが、当事者がどう生きていきたいのかまで考えられていることはまだ少ないかと思います。
ーー時折、うさばにたちを形づくる柔らかな描線とは対照的な、写実的な描写も登場しました。
メガネ学専攻:うさばにたちはじめキャラクターたちのようなかわいらしい、柔らかな描線だけでは、読者の方に現実とは異なる「他の世界のお話」という印象を与えてしまうかと思います。途中で写実的な描写や写真を入れることで、本作の世界と現実が地続きにあるといった印象を持っていただければいいなという思いがありました。
ーー本作を描くなかで印象に残ってるシーンは?
メガネ学専攻:本作において絶対に描きたいと思っていたのは、物語の後半にうさばにたちが「おれたちはおなかいっぱいもぐもぐして/ぎゅーしてぐーぐーしたいだけなのに!」といった葛藤を泣きながら話すシーンです。
うさばにたちは周りに迷惑をかけているけれど、そのことを自覚できていない。しかし、みんなと一緒に暮らしていきたい。それでもどうすればいいのかはわからないーー。
うさばにたちはただそれだけなのだということを読者の方にも伝えたい。うさばにたちの姿を見て、障壁とはなにかと考えてほしいと思いながら、このシーンを描きました。
ーー本作の冒頭、わた毛たちの「いくら心が純粋でも共存できねば排除される…!」という台詞は、純粋なうさばにたちを表すものであったかと思います。
メガネ学専攻:「排除」という言葉を使うかとても迷いました。ただ世の中において精神的に成熟していない状態の人たちの意見は、否定ではなく意見そのものが無かったことにされてしまうことが多いと感じています。存在そのものが無くなってしまう……。
なにかを意見しようとしても「あとは私たちで考えておくから」といった、温かいように見えて遮断するだけの対応は多いでしょう。意見が排除されてしまうことへの憤りを感じています。本当は排除された意見にすごく大切な視点が隠れているのではないでしょうか。
ーー改めてメガネ学専攻さんが本作で描いた社会とのギャップ・障壁とは?
メガネ学専攻:個人の特性による障壁と、それに対する社会との摩擦と言いますか……。特性によって人に迷惑をかけてしまうことで、本来は尊重されるべきものが尊重されない。そんなことが今の世の中にあると私は感じています。
ただ特性に関する問題を克服・矯正して解決させるのではなく、人との関わり合いによって解決できる部分も絶対にあると信じています。
本作の主人公たちにも自分たちではどうしようもできない特性があり、本作でそれが無くなることはありません。ただ彼らがより良い生活や人生を歩めるような内容にしたいという思いがありました。
自身の抱える特性や困りごとを抱いたまま、他の人たちと共生していく。そんな内容の作品を本作で描きたかったですし、これからも描いていきたいです。
ーー今後の活動について教えてください。
メガネ学専攻:自身の表現したいことを形にしつつ、かわいい作風を活かしてみなさんの生活に溶け込んでいくような身近な作品を作っていきたいです。
また、もし自身の創作が誰かの助けになる機会があるのであれば、ぜひ積極的にお手伝いしたいと考えています。