鏡のように輝く1円玉 エラー? 偽造? それともコイン磨き……このお金の正体は?

■普通の1円玉とは明らかに違う!

通常の1円玉(右)と比べてみると違いが一目瞭然。この輝く1円玉の正体は?

  筆者が近所のスーパーで総菜を買ったところ、レジでもらったお釣りから鏡のように輝く1円玉を見つけた。通常の1円玉と比べるとその差は歴然だ。その表面に自分の顔がうっすらと映ってしまうほどである。いったい、この1円玉はなんだろう? パラレルワールドからやってきた1円玉なのだろうか。はたまた、偽物か? 

  そんなことが頭をよぎってしまうのだが、この1円玉はれっきとした本物だ。プルーフ貨幣といい、表面を鏡のように磨き上げられたコインなのである。最近流行っているコイン磨きに使われたコインではない。磨きの段階まで、造幣局で仕上げられたものである。

  プルーフ貨幣は、毎年発売される「プルーフ貨幣セット」に組み込まれている。この貨幣セットは造幣局が販売している。まるで金貨のように美しい5円玉や、通常では見られないようなキラキラした500円玉などが専用のケースに収められているので、コレクターならずとも手にしたいアイテムである。

  このプルーフ貨幣セットのコインは、コンビニやスーパーなどでも問題なく使用できる。ただ、ケースに入っているので、使いたいと思ったらケースを壊すしかない。つまり、この1円玉はケースを壊して、1円として使われたコインなのである。何人かの人の手を経たようで、表面に擦り傷はついているが、鏡のような輝きは残っている。

■このコインに価値はある?

  年号を見ると平成14年とある。約22年前に製造されたコインだ。使われたのは最近だと思われるので、おそらく数か月前まで、持ち主がコレクションとして所蔵していたのだろう。ただし、なぜ使ってしまったのか、その理由は不明だ。持ち主がコイン収集に飽きたか、はたまた持ち主が亡くなって遺族が使った可能性もある。

日本貨幣カタログ<2024年版>(紀伊國屋書店)

  なお、平成14年の1円玉は発行枚数が966万7000枚であり、比較的少ない。数字だけを見れば多いように感じるが、平成元年には23億6697万枚も発行されていたと思うと、その少なさがわかるだろう。そのため、『2024年版 日本貨幣カタログ』(日本貨幣商協同組合/編集・発行)を見ると、数百円程度のプレミアがついている。ただし、あくまでもこれはコイン商が販売する際の価格であり、買取価格ではない。

  テレビ番組ではしばし、価値のあるコインとして珍しい年号のコインが紹介される。数百円の価値! 数千円の価値! などと言って視聴者を煽る傾向があるが、ほとんどの場合、コイン商に持ち込んでも買取不可なので注意したい。このプルーフ貨幣の1円玉も当然のごとく、額面以上の価値はない。価値は1円である。

  こうした変わり種のコインは財布の中に紛れ込んでいることもあるので、興味をもった人は、ゴールデンウィークのように多くの小銭を手にする機会にぜひ注意して探してみよう。ただし、繰り返すようだが、ほとんどの場合は額面以上の価値はない。珍しい年号のコインを見つけて一攫千金、ということはまずありえないので注意したい。

 

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