「サッカー本大賞2024」宮市亮『それでも前を向く』が大賞に「日本サッカーを強く逞しくしてくれたら」
■そのほかの優秀作品7作品は?
【優秀作品7作品】
西部謙司(著)『戦術リストランテVII 「デジタル化」したサッカーの未来』(ソル・メディア)
ありがとうございます。『戦術リストランテ』のシリーズはfootballista誌の創刊当時からの連載を都度まとめて書籍化してきたものです。長年、ご愛顧いただいている読者の方々のおかげです。そのfootballista誌も紙の雑誌からWEBへ移行しています。連載の方は「新戦術リストランテ」として週刊化しているのですが、時の流れを感じるしだいです。
サッカー本大賞もサッカー映像大賞になってしまうのかもしれませんが、本にはそれなりの良さがありますので、是非続けていただけたらと願っております。
西部謙司
五百蔵容(著)『森保ストラテジー サッカー最強国撃破への長き物語』(星海社)
全ての試合は、それぞれ一度しかない、繰り返し不能な「作品」である。あらゆるジャンルの、あらゆる「作品」がそうであるように、サッカーの試合という「作品」にも、そこまでの過程、そこからの発展が必ずある。表現者である選手達、監督やスタッフの方々へのリスペクトを抱き、つぶさに観て、書いていきたい……。
そんな思いで追ってきた「作品」の、優れた送り手の一人である森保一監督の仕事を、サンフレッチェ広島時代から連続するプロセスとして総括できたことは、充実した経験となりました。加えて、このような賞に推挙戴き、望外の幸せを感じております。本書にご助力戴いた全ての方々、書くに足る、解き明かすに足る「作品」の数々を送り出された森保監督をはじめとしたサッカー関係者の方々に、心から感謝いたします。
五百蔵容
ひぐらしひなつ(著)『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』(エクスナレッジ)
サッカーの現場での取材はいつもハードで殺伐として、そのしんどさのあまり思わず「報われたい…」と思ってしまい、否、このしんどさこそが豊潤な実りなのだと自らに言い聞かせる日々の中で、このような評価をいただけて、なんだか報われた思いです。
あらためて、取材にご協力くださったみなさま、一冊に結実させてくださった二人の編集者、審査員のみなさま、読者のみなさまに御礼申し上げます。
そして、もしかしたら「読む」という娯楽がニッチなものになりつつあるかもしれない現代において、このような場を作っては新たな読者との出会いを演出してくださる株式会社カンゼンさまにも、感謝を捧げたいと思います。
これを励みに、これからも精進して参ります。
同志であるサッカー本の書き手たちが、それぞれに、いつか倒れる日まで書き続けられますように。
ひぐらしひなつ
長束恭行(著)『もえるバトレニ モドリッチと仲間たちの夢のカタール大冒険譚』(ソル・メディア)
『東欧サッカークロニクル』がサッカージャーナリストとしての集大成、『ルカ・モドリッチ自伝/マイゲーム』が翻訳家としての集大成であるならば、『もえるバトレニ』はクロアチアサッカーに捧げた人生の集大成です。3作目もサッカー本大賞の優秀作品に選ばれたことをとても喜ばしく思っております。
長束恭行
須田芳正(著)/福岡正高(著)/杉崎達哉(著)/福士徳文(著)『ドイツサッカー文化論』(東洋館出版社)
この度は、「サッカー本大賞2024」の優秀作品に選んでいただき誠に光栄に思います。本書は、私の一年間のドイツ生活で感じたことを「ドイツサッカー研究会」の仲間たちと、まとめ上げた一冊です。
ドイツでは日常にサッカーがあり、毎週末、地域のサッカークラブで子供から大人まで誰もが楽しんでサッカーをプレーする姿を思い出します。サッカー文化という点で、まだまだ日本とドイツでは大きな差があります。
子どもたちに夢を与える日本代表の強化も大切ですが、まず日本サッカー界がやるべきことはサッカー人口を増やすことや誰もがサッカーやフットサルをプレーすることができる環境を整備することだと感じます。そして近い将来、日本でもサッカーが日常生活の一部になっていることを願ってやみません。
須田芳正
アレッサンドロ・ビットリオ・フォルミサーノ(著)/片野道郎(著)『モダンサッカー3.0 「ポジショナルプレー」から「ファンクショナルプレー」へ』(ソル・メディア)
『モダンサッカー3.0』がこのような形で評価され、認められたことを、とても嬉しく思っています。私は「サッカー選手はプレーを通じてどのように学習するのか?」という問いへの答えをピッチ上に見出すために、何年にもわたって試行錯誤を繰り返し、進歩を積み重ねてきました。その副産物とも言える本書は、サッカーの新たな潮流を追いかけ、新たなメソッドの地平を切り開こうという試みにとって、単なる出発点に過ぎません。次の機会があれば、その新たな潮流、新たなメソッドがもたらしてくれる技術的・戦術的な可能性をより具体的に掘り下げてみたいとも考えています。その前に今はまず、この賞を共著者の片野道郎ともども、心から喜びたいと思います。
アレッサンドロ・フォルミサーノ
今西和男(著)『聞く、伝える、考える。 私がサッカーから学び 人を育てる上で貫いたこと』(アスリートマガジン)
この度は、優秀作品に選んでいただきありがとうございます。こうして評価していただけたこと、大変名誉なことだと嬉しく思っております。サッカーに出会えたことを何よりも幸せに思っています。
幼少期に被爆し、他の子ども達と同じように運動ができなくなり、負い目のようなものがあった私が、サッカーに出会い、サッカーを通してたくさんの友達ができること、誰とでも楽しく過ごせるようになることを知りました。そこからサッカーにのめりこみ、気づくと人生の大半をサッカーと共に過ごしてきました。この出会いによって、その後私は多くのことを学びました。
この学びはサッカーだけにとどまらず、人生において、人としての成長に役立つことを身をもって経験しました。この経験があったからこそ、「サッカー選手である前に良き社会人として」ということを多くの選手たちに伝えてきました。
サッカーは日々進歩、進化していきます。ただ、サッカーをするのは人であり、私たちはサッカー選手を育てています。どんなに変化しようとも変わらないものがあることを忘れてはならないと思っています。
サッカー指導者だけではなく、様々なスポーツ指導者に読んで頂きたいことはもちろんですが、スポーツをしている中高生にも読んで頂き、今後の人生に何かしら役立てて頂ければ幸いです。
この度は本当にありがとうございました。
今西和男