『WIND BREAKER』梅宮一はなぜ慕われる? 仲間を包み込む「ボウフウリン総代」の魅力を深掘り
2021年1月よりWEBコミック配信サイト「マガジンポケット」にて連載中の『WIND BREAKER』(通称:ウィンブレ)が、「令和のヤンキー漫画」の代名詞となりつつある。4月4日からはテレビアニメ版も好評放送中だ。
風鈴高校に通う生徒たちは不良ながら、街を守るために動く地元のヒーロー。今までのヤンキーとは異なった形で活躍をする、新しい世界観が多くの読者のハートを鷲掴みにした。個性的なメンツが多数登場するなか、誰もが自然と惹かれてしまうキャラクターはきっと梅宮一(うめみや・はじめ)だろう。この男の魅力に気づけば、あとはもう『ウィンブレ』の沼に引き込まれるだけである。
防風鈴(ボウフウリン)の総代と言えばこの男!
風鈴高校では頂点(てっぺん)に君臨する者を「総代」と呼び、生徒たちを取り仕切るのが役目だ。暴走族でいうところの総長。そんな重要ポジションを担うのが、三年生の梅宮一である。喧嘩自慢が集まる高校の総代と聞けば強面な人物を思い浮かべるが……彼を一目見ただけでは誰もが拍子抜けしてしまう。なぜなら穏やかで気さく、ヤンキーらしさがない普通のお兄ちゃんだからだ。
性格も茶目っ気たっぷりで、非常に親しみやすい。強者特有の「弱者は話しかけるなオーラ」なんて一切出ておらず、むしろ色々な人と交流を図るので、通常の不良イメージからは激しく遠ざかる。主人公の遥は当初、彼のフレンドリーさに慣れず、違和感を抱いていた。きっと読者もあっけらかんとした総代の姿には、少し驚いたことだろう。
梅宮一は近寄り難さゼロながら、朗らかな人間性と圧倒的な実力で、風鈴高校を纏め上げるパワフルなキャラクターである。
梅宮一が慕われる理由
「圧倒的な実力」と説明したが、これは彼の性格と腕っぷしの両方を指す。ただ優しいだけでも、喧嘩が強いだけでも人はついてこない。風鈴高校の生徒が梅宮に絶対的な信頼を置き、心の底から尊敬をするのは全てにおいてカッコいい男だからだ。
彼の拳は相当な威力。喧嘩が得意な遥でさえその姿に釘付けになってしまうほどで、トップを張るにふさわしい強さだ。ファイトスタイルとしては意外性はなく、性格のストレートさが戦い方にもよく現れている。「喧嘩は対話」という名言を残しており、ただ相手を打ち負かすことが目的ではないと梅宮は語る。拳を交わすのはとにかく“分かり合うため”。揉め事の先には何かがある、と考える思慮深さが多くの人から慕われる最大のポイントと言えよう。
ヤンキーの世界で筋を通すのは基本中の基本だが、途中で道を踏み外すのはよくあること。その基本を一切ぶらさず、自身の正義を貫く総代の背中に惹かれて、ボウフウリンは今日も街を守るのだ。
常にみんなの心には、梅宮の姿が……
風鈴高校では日夜、様々な事件が起きる。現場には梅宮が不在であることも多く、常日頃から1年と行動を共にしているわけではないのに、仲間の間では彼についての話題が上がることが多い。
筆者が「全員の心にトップの姿が刻まれている」と再確認したのは、ズバリ暴力と恐怖で人を支配するKEELと、ボウフウリンのドンパチ。遥らの同級生・杏西(あんざい)が、誘拐された友人・長門のためにクラスメイトを総動員して救出へ向かう胸アツエピソードだ。1年生だけでは話を片づけられず、2年生を巻き込む事態となってしまうが、相手と真っすぐ向き合う姿勢から、梅宮のマインドをしっかりと受け継いでいると強く感じた。
騒動が収束し、にこやかに受け止めてくれるお父さんのような梅宮の存在は、実に大きい。その場にはおらずとも、防風鈴の心の中にはいつも総代の姿がある。だからこそ生徒は強く成長し、足を止めずに突き進めるのだ。