手嶋龍一、辻真先、柳田邦男……ノンフィクションからミステリまでNHKから人気作家が多数輩出される背景

ミステリの新人賞を受賞した作家が、NHKの元アナウンサーだったかもしれないと噂になっている。誰も認めていない真偽不明な話だけに詳細な言及は避けるが、このケースに限らずNHKからは実に多彩な作家が登場して、読者を楽しませたり驚かせたりしてきた。歴史に残るベストセラーを送り出した人もいれば、ミステリ界の長老として今も作品を発表し続けている人もいる。記者としての取材経験をノンフィクションやフィクションに盛り込む人もいる。どうしてNHKからこれほどまでに作家が生まれるのか?

1981年から放送が始まった『クイズ面白ゼミナール』での軽妙な司会ぶりが支持されて、放送局を超えたお茶の間の人気者となっていた鈴木アナの本で、中身も面白かったことから好評を博した。95歳になった鈴木アナが未だに「気配りおじさん」と呼ばれるのも、この時の印象が強烈だったからだ。

全国に放送局があるNHKでは、アナウンサーもそうした地方局に配属されるため、誰もがずっと東京にいられる訳ではない。激しい競争の中で勝ち残るために自分なりの武器を磨く中で、番組に関係することを学んだり新しい知識を取り入れたりして自分を高めていこうとする。その成果が、本としてアウトプットされて評判になるという訳だ。
アナウンサーが日々の仕事で自己研鑽に励むなら、記者は日々の取材活動を通して多くの情報を集めている。深掘りが必要な報道なら取材にかける時間も膨大になる。そうして集めた情報はニュースなり特集番組に反映されることになるが、すべてを15秒のニュースなり1時間の報道番組に盛り込める訳ではない。あの一件は裏でどのような動きがあったのか。一言しか使われなかったインタビューでは、本当はどれだけのことが語られていたのか。気になる人も多いだろう。
そうした情報を、後に記者が本という形にまとめて出版することは、報道の世界で昔から行われている。特に新聞記者は、取材の成果を記事として書いて発表しているため、そうした記事を加筆して本にすることもやりやすかった。有名なところでは、朝日新聞記者の本多勝一が世界各地に取材して連載したルポルタージュを『カナダ・エスキモー』『ニューギニア高地人』『アラビア遊牧民』にまとめて刊行し、評判となった。

振り返ればNHKには、1966年に相次いで発生した全日空羽田沖墜落事故、カナダ太平洋航空機墜落事故、BOAC機空中分解事故という航空機事故を記者として取材し、原因に迫った『マッハの恐怖』を1971年に発表して、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した柳田邦男がいる。1974年にNHKを退社後も航空評論家として第一線で活動し、1985年に発生した日本航空123便墜落事故では、NHKに出演して事故の状況分析などを行った。





















