【話題作試し読み】苦悶する“元魔王”が愛らしい『命乞い無双』 新たなヒロイン爆誕の異世界ファンタジーを読む

【漫画】『命乞い無双』第1話&インタビュー

 村娘のチェルシーは、実は転生した元魔王。転生の際になぜか魔力もスキルも引き継げず、ただの人間としての生活を強いられていた。 そんな屈辱の日々が続くある日、村に魔王軍の残党が現れる。自分の正体に気づかない元部下に追い詰められ、絶体絶命のピンチに陥るチェルシーだが、そこでついにスキルが発現!  そのスキルの名は――「命乞い」!?

 人気漫画配信サイト「コミプレ」が展開する、刺激にあふれたコミックレーベル「わいるどヒーローズ」で連載中の『最強スキル「命乞い」で悔しいけど無双しちゃう元魔王様の世界征服活動』(原作:村田真哉/作画:隅田かずあさ)。「命乞い」という屈辱的なスキルを武器に、元魔王の愛らしい娘が奮闘するまったく新しい異世界ファンタジーで、読み始めればクセになる中毒性の高いだ。

 本作を手がけるのは、アニメ化も果たし、2023年には連載10周年を迎えた人気作『キリングバイツ』でもお馴染みの原作:村田真哉&作画:隅田かずあさの黄金タッグ。新たなツンデレヒロインが爆誕した本作について、じっくり話を聞いた。(編集部)

『最強スキル「命乞い」〜』第1話を試し読み(続きを読むには画像をクリック)


©村田真哉 隅田かずあさ / ヒーローズ

――村田先生&隅田先生といえば『キリングバイツ』も絶賛連載中ですが、どんな経緯で本作が生まれたのでしょうか。

村田:担当編集者が打ち合わせ中、急に「命乞いはお好きですか?」と聞いてきたので、ギャグか何かと思ってスルーしていたのですが、後で聞いてみたら本気だったので、そのアイデアを前から描いてみたかった異世界漫画に乗せつつ描いてみました。

隅田:『キリングバイツ』と同時に連載していたスピンオフ『ほしがりすぎでしょ!?稲葉さん』が連載終了となって数か月、「また二本にしませんか? 異世界モノなんですが……」と担当さんから電話をもらって、ここ最近異世界モノのアニメや漫画をいくつか見ていたので、一度くらいは異世界モノも良いかなとお受けしました。

――不遇な能力からスタートする異世界ファンタジーのなかでも、「元魔王」と「命乞い」という組み合わせには突き抜けた悲哀や情けなさがあり、冒頭から物語に引き込まれます。否応なく危機を回避できるという高性能と、(元魔王にとって)ものすごい屈辱という対価のバランスもバッチリですね。

村田:異質なものを結びつけるのがアイデアの基本なので、命乞いをさせるからには、それなりに地位や名誉があった方がいいと思い、魔王にしました。また魔力や権威があると命乞いさせ難いと思い、村娘に転生させました。

隅田:僕が最初に聞いたのは設定のみで「異世界で元魔王が土下座で命乞いする」というざっくりとした話で、どういう話か想像してもまず想像通りにはならないだろうし、全く分かりませんでした。逆に前情報として色々聞くのではなく、ネームの段階で読者と同じ視点で見たほうが良いかと思ってネームを待ちました。その後ネームを見て、なるほど確かに「異世界で元魔王が土下座で命乞いする」だなと。

――魔王ヴェルダース=チェルシーはあらたなツンデレヒロインとしても魅力的です。村田先生自身は、彼女の魅力をどう捉えていますか。

村田:異世界における「村娘」という存在は非常に煽情的であり、読者の村娘に対する憧憬が、そのままチェルシーの魅力に繋がっていると思います。あと隅田先生の描くチェルシー泣き顔がすごくいいです。

 隅田先生の作画は肉体的存在感が凄まじく、例え存在が希薄であったとしても、キャラクターを成立させてしまう力があります。それがこの荒唐無稽な設定や物語に、強力な説得力を生み出していると思います。

ーーたしかに、「なんという屈辱」と歯噛みするチェルシーの表情は本作の大きな魅力ですね。情けなさや打算のようなイメージと共に、可憐で愛らしいイメージも伝わる素敵な作画になっていますが、この見せ場について隅田先生はどんなポイントを意識しているでしょうか。

隅田:最初のデザインの段階ではおっとりとした村娘をイメージして描きましたが、結局中身は魔王であるので、性格につられてちょっと強気なイメージに描き方も変わっています。やはり屈辱に耐える表情が彼女の魅力であるため、おっとりとした村娘より、勝気な方が屈辱に耐える表情は映えますね。

 難しいのは、どこまで屈辱という感情を表情で表現するかで、ひどく顔が歪むほど激しい方が伝わるものも多くて迫力もでるんですが、そこに読者の庇護欲をくすぐる感じの…何というか艶が出したいんですね、それを求めて描いている感じです。それに、なんども「屈辱…」っていうシーンが出てくるわけで、お約束は面白いですが毎回同じって思われたくないので、常にそこは絵の面でも磨いていきたいです。

――もう一人の主人公とも言える勇者アルフォートも不遇で、チェルシーが図らずも再起を促していく展開も予想外で楽しいものでした。「勇者」を描く上でも多くの選択肢があったと思いますが、なぜこうしたキャラクターになったのでしょうか。

村田:魔王が落ちぶれているからには、勇者はもっと落ちぶれていないといけないと思いました。落ちぶれ果てた魔王と勇者の利害が一致し、図らずも協力し相互理解を深めてほしいです。

隅田:作画においては、元々の魔王と戦ってた時代の勇者は、まさに勇者という感じでビジュアル的にも誰しもが「ああ勇者ね」と思うようなステレオタイプを目指しました。現在の落ちぶれてヘロヘロのアルフォードですが……ヘロヘロとスイッチの入ってる時とギャップをできるだけ生みつつ、でも別人にならないように気を付けてます。

――ヴェルダース、チェルシー、アルフォート、ルマンドなど、甘く懐かしいネーミングも素敵ですね。

村田:魔物は飴、人間はスナック菓子からきています。ネーミングだけでなく、キャラクター性も商品に対する僕の勝手なイメージから着想を得ています。勇者アルフォートは海を渡る冒険者であり、魔王ヴェルダースは特別な存在です。

――それぞれ、お気に入りのキャラクターとその理由を教えてください。

村田:チェルシーも可愛いのですが、一話ではじめて命乞いの洗礼を受けたオークのヴィックス将軍が好きです。何気に命乞いされる前も後も、威厳を失わない姿に、オークながらに将軍としての矜持を感じます。

隅田:まだ始まったばかりでキャラも少ないので難しいですが、しいて言うならマクビ亭店主のジャガリコでしょうか。まつげがキュートで、なぜか聖剣をちゃっかり買い取ってると所もおもろ。

――「世界征服」はどのように進行するのか、元魔王と勇者の関係性が今後どうなっていくのか気になります。差し支えない範囲で今後の注目ポイントを聞かせてください。

村田:敵対する国も、種族も、人間同士も、全ては「命乞い」の元、一つになっていきます。その過程で、一体どれだけの醜態を晒さなければならないのか……という、魔王の苦悩と屈辱にご注目ください。

――連載を追いかけているファン、そしてこれから単行本を読むファンのそれぞれに、一言ずつメッセージをお願いします。

村田:命乞いとは、命を尊ぶ美しい行為です。殺伐とした昨今の世の中ですが、この漫画を読む事で、命の大切さ、命を守るために足掻く事の尊さを感じて頂ければ幸いです。

隅田:「命乞い」という一見ネガティブなワードを、ただひたすらにポジティブに変えていくこの漫画。ネガティブな事が多い昨今、ひと時の楽しさを提供できればと思っております。チェルシーやアルフォートをよろしくお願いします。

◆『最強スキル「命乞い」で悔しいけど無双しちゃう元魔王様の世界征服活動』
https://viewer.heros-web.com/episode/4856001361370797022

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