「新NISAで1億円は実績に基づいた現実的な数字」 10万部突破『新NISA完全攻略』著者・山口貴大インタビュー
新NISAは画期的な制度
ーー22年には著作『年収300万円FIRE 貯金ゼロから7年でセミリタイアする「お金の増やし方」』(KADOKAWA)を刊行し、自身の経験を元にFIRE(経済的自立・早期リタイア)を達成する方法を解説しています。そしてこの度、『【新NISA完全攻略】月5万円から始める「リアルすぎる」1億円の作り方』を出版し、話題を呼んでいますね。投資で得た利益が非課税になるNISAですが、新NISAは大きな変更点は何でしょうか?
山口:まず、非課税投資枠の上限が一気に上がって、合計1800万円となりました。従来の「つみたてNISA」と「一般NISA」がひとつになったのですが、「つみたてNISA」は年間40万円だったのが、新NISA「つみたて投資枠」では3倍の120万円まで可能になりました。今まで1ヶ月で3万3333円と割り切れずに気持ちの悪かった数字しか積み立てできませんでしたが、いまでは10万円となった。それだけの額があると15~20年後に資産が増えてくるので、これは大きなことですね。そして従来の「一般NISA」は年間120万円でしたが、新NISAの「成長投資枠」は2倍の240万円となりました。
■新NISA(金融庁ホームページより)
■旧NISA(金融庁ホームページより)
つまり、年間360万円まで非課税枠で投資できる箱があるようなものです。最短5年で、非課税枠1800万円を全部埋められます。旧NISAで15~20年間も運用するとなると、高齢の方にとっては長すぎる。それが短い5年で投資ができて、配当金や値上がり益が非課税になるのは大きいでしょう。また、旧NISAは売却したら非課税枠が終了していましたが、新NISAは非課税枠が復活するようになりました。
この1800万円は一般の方にとっては大きい金額ですよね。富裕層の方以外にとっては、投資における税金はもう払わなくていいというのと同義でしょう。本当に画期的な制度だと思います。
ーー山口さんが新NISAの投資対象として勧めるインデックスファンドとは?
山口:そもそもファンドというのは、投資信託です。投資信託とは、金融商品がパッケージ化されているもの。例えば、A社という銘柄だけに投資して倒産するとゼロになりますが、投資信託はA社もB社もC社も...といろいろ入っているので、A社が倒産したとしても、資産が大きく減ることはありません。むしろ他の株が全部上がっていたら、プラスになるかもしれない。そういう意味で、個別株よりも、投資信託を選ぶほうがリスクは分散されています。
投資信託には、アクティブファンドとインデックスファンドがあります。アクティブファンドはファンドマネージャーと呼ばれる運用のプロが、自らの裁量で投資方針や銘柄を決めます。例えば「これから先、AIやEVが上がりそうだな」と考えて、当たりをつけてポートフォリオ(資産形成上の金融商品の組み合わせ)を組んでいる。
一方、インデックスファンドは、株価指数に連動して機械的に選ばれます。例えば日本株だったら、日経平均やTOPIXといった株価指数に連動したポートフォリオが組まれる。アメリカだったら、S&P500、ナスダック、NYダウといった指数で選ばれている銘柄で組まれます。
過去のリターン・勝率を見たときによく言われてるのが「プロでも個人でも70%の確率でインデックスファンドが勝つ」ということです。下手に自分で選ぶのではなく、インデックスファンドを選ぶほうが、大多数の人にとって最適解なんです。
ーーインデックスファンドの中で、S&P500と全世界株式の2つを勧めていました。その違いと利点について教えてください。
山口:S&P500は米国を代表する大型黒字企業、全世界株式は米国株を含む全世界の株式(先進国と新興国)で組まれています。
全世界株式は日本株や中国株、他にも先進国のカナダやイギリスなどが入っているので、リスクはより分散されていますね。資産運用を成功させる大事なポイントは「長期・積立・分散」です。そのうちの分散の面で言うと、全世界株式が優れている。ただ、全世界株式には大体50~60%は米国株が入ってるので、値動き自体としては米国株と相関性は高いんですが。
一方、これまでの実績をみると、S&P500のほうがリターンが高い。やはりアメリカは経済が強いからです。資産運用はどれぐらいのリスクをとってどれぐらいのリターンがあるかという話です。リターンの高いS&P500にするか、リスクの分散された全世界株式にするか、という選択肢になってきます。
1億円というのは、実績に基づいた現実的な数字
ーー新NISAは書籍名のように1億円を作ることができる仕組みなのでしょうか?山口:S&P500の過去30年の実績としてプラス1億円だったんです。月5万円、つまり年間60万円で投資した場合、投資した元本は1800万円で新NISAの上限額ですが、それがいくらになったかというと、約1億2000万円でした。
S&P500の過去30年のリターンは大体10%ほどありました。それからインフレ率2~3%を引いたとすると、大体7%ほどになったわけです。ただ、この先の未来も10%であるかはわかりません。5%かもしれないし、3%かもしれない。もしかしたら、13%まで上がるかもしれません。
20・30代の人だったら、30年続けることは現実的な話ですよね。1億円というのは、実績に基づいた現実的な数字なんです。もう少し上の世代で投資年数が短くなるならば、それよりは低い金額にはなってくるでしょう。
ーーあとがきに「成功する人は適正なリスクをとった人」と書いていました。
山口:SNSで輝いて見える起業家でも芸能人でも、成功しているところだけがフィーチャーされます。でもその裏では、失敗している行動が同じくらいあるはずです。適正リスクとはそういう話ですね。
資産もやはりリスクをとらないと増えません。ただ、注意しないといけないのは、自分が100万円を持っているときに90万円を投資することは、非常にリスクが高い。株が暴落して手元の現金がなくなったら、下がっている株を売らないといけない。つまり、過剰リスクをとる人は退場となります。
だからインデックス投資は半分になるリスクがあると考えて、それでも平然と入れる程度の金額しか入れてはいけません。そのリスクをどれぐらい許容できるかは人によって変わってきます。投資初心者の人はリスクを大きくとらないほうがいいですし、自分が会社員なのか自営業なのか、若いのか高齢なのか、家族がいるのか独身なのかによって、そのリスク許容度は変わってきます。
リスクをまったくとらないこと自体がそもそもリスクです。今は円安インフレになっていて、お金の価値はどんどん目減りしている。大体年間2%のインフレ目標を掲げているということは、3%以上のリターンを出さないとあなたのお金が減っていってしまう。そこで高いリスクはとらなくていいので、ほど良い加減の適正リスクをとって、長く運用していくことがポイントになってくるでしょう。
■書籍情報
『【新NISA完全攻略】月5万円から始める「リアルすぎる」1億円の作り方』
著者:山口貴大(ライオン兄さん)
価格:1,650円
発売日:2023年11月9日
出版社:KADOKAWA
■関連情報
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