『キングダム』さらに深まる歴史大河としての魅力 70巻で描かれた法家・韓非子の議論とは
それゆえ、中華統一を目指す嬴政が「法の整備」を提唱した時、多くの人物が衝撃を受けたような表情が描かれている。王政が敷かれていた当時、儒家や道家といった思想家が力を持っていたが、作中の趙王の素行を見ればまさに「無法」で、立場があれば好き勝手できてしまう状況があったと考えられる。
もちろん、現在でも儒教的な文化が完全に影響力をなくしたわけではない。韓国では儒教が国の教育として利用されていて、中国から漢字や法などを参考にしてきた日本でも名残がある。作中で描かれた韓非子のストーリーは、日本の法の起源に近く、歴史の勉強としても活用できるものだ。当時の人間の思想や歴史的背景が描かれたことで、より深みを増した『キングダム』は、読み返すごとに面白さが増してくる。