日本映画史における女性監督の系譜とは? 「作家論」「100本ガイド」で過去、現在、未来を俯瞰する

日本映画史における女性監督の系譜を見つめ直す

 2023年12月26日に、映画研究者/批評家の北村匡平、映画文筆家の児玉美月による共著『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』(フィルムアート社)が発売される。西川美和、山田尚子、山戸結希らの作家論や、女性作家作品ガイド100本などが、全原稿書き下ろしで収録される。

 “「映画監督」と呼ばれる人々が一人残らず女性であったなら、当然そこに「女性監督」という呼称は生まれえない。かつて映画監督には、男性しかいないとされていた時代があった。”(「序論」より)という問題提起から始まる本書。いまだ深刻なジェンダーギャップを抱える日本映画の歴史について、女性作家のまなざしから見つめ直す、これまでにない映画批評となっている。

 作家論で取り上げられている主な作家は、『永い言い訳(2016年)』や『すばらしき世界(2021年)』を手がけた西川美和や、アニメーション映画『聲の形(2016)』の山田尚子、『ヘルタースケルター(2012)』を監督した蜷川実花、『溺れるナイフ(2016)』でメガホンをとった山戸結希ほか多数だ。

 また、作家ごとの評論だけでなく、日本映画史における女性監督の系譜、次世代の新進作家紹介、今見るべき日本の女性監督作品の100本ガイドまで掲載。全て著者渾身の書き下ろしだ。「女性作家」を出発点として、日本映画の過去、現在、未来を見つめ直すことのできる、必読本となっている。

■著者プロフィール
北村匡平(きたむら・きょうへい)
映画研究者/批評家。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。単著に『椎名林檎論——乱調の音楽』(文藝春秋、2022年)、『アクター・ジェンダー・イメージズ——転覆の身振り』(青土社、2021年)、『24フレームの映画学——映像表現を解体する』(晃洋書房、2021年)、『美と破壊の女優 京マチ子』(筑摩書房、2019年)、『スター女優の文化社会学——戦後日本が欲望した聖女と魔女』(作品社、2017年)、共編著に『川島雄三は二度生まれる』(水声社、2018年)、『リメイク映画の創造力』(水声社、2017年)、翻訳書にポール・アンドラ『黒澤明の羅生門——フィルムに籠めた告白と鎮魂』(新潮社、2019年)などがある。

児玉美月(こだま・みづき)
映画文筆家。共著に『反=恋愛映画論——『花束みたいな恋をした』からホン・サンスまで』(ele-king books、2022年)、『「百合映画」完全ガイド』(星海社新書、2020年)、分担執筆に『ロウ・イエ 作家主義』(A PEOPLE、2023年)、『デヴィッド・クローネンバーグ 進化と倒錯のメタフィジックス』(ele-king books、2023年)、『フィルムメーカーズ24 ホン・サンス』(宮帯出版社、2023年)、『ジャン=リュック・ゴダールの革命』(ele-king books、2023年)、『韓国女性映画 わたしたちの物語』(河出書房新社、2022年)、『アニエス・ヴァルダ——愛と記憶のシネアスト (ドキュメンタリー叢書)』(neoneo編集室、2021年)、『岩井俊二 『Love Letter』から『ラストレター』、そして『チィファの手紙』へ』(河出書房新社、2020年)、『フィルムメーカーズ21 ジャン=リュック・ゴダール』(宮帯出版社、2020年)など多数。『朝日新聞』、『キネマ旬報』、『文藝』、『ユリイカ』、『文學界』などに寄稿。

■作品情報
作品名:『彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家』
著者 :北村匡平・児玉美月
発売日:2023年12月26日
判型・製本:四六判・並製
ページ数:356頁
定価:2,400円+税
ISBN:978-4-8459-2314-4
発売・発行:株式会社フィルムアート社

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「新作」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる