冨樫義博『幽☆遊☆白書』実写ドラマは原作漫画をどうアップデートした? 幽助 vs 戸愚呂弟の興奮再び

『幽☆遊☆白書』実写ドラマ評

 そうすることで、冨樫義博がどのようにキャラクターたちを造形し、どのように成長させていき、そしてクライマックスとも言える幽助vs戸愚呂弟へと繋げていったのかを再確認できるのだ。

 霊界に行ってコエンマから生き返る条件として課せられた霊界探偵の仕事で、幽助は蔵馬と飛影を追うことになって飛影と戦い、勝利を収めることで相手に自分の力を認めさせ、ひとつのチームになっていく。その結果として、暗黒武術会という、「週刊少年ジャンプ」誌上では『DRAGON BALL』の天下一武道会と並ぶバトルトーナメントに幽助、桑原、蔵馬、飛影ともうひとり、謎の覆面と出ることになる。そこで戦いながら桑原が霊剣を発動させ、蔵馬が妖狐となりといった具合に、それぞれが強さを高めお互いを必要な存在と意識していく。

 幽助も、決勝での戸愚呂弟との戦いを想定して壮絶な修行を行い、そして迎えた決勝戦で蔵馬は鴉、飛影は武威、桑原は戸愚呂兄といったいずれも強敵を相手に戦って、それぞれに圧巻の見せ場を作る。どちらが勝っても不思議のないスリリングなバトルが、週をまたいで続いていくのだ。連載時も、そしてTVアニメの放送時も盛り上がらないはずがなかった。ドラマ版に足りないところがあるとしたら、連載のようなどこまでも見ていたくなるスリリングさだろう。

 その究極が、幽助と戸愚呂弟との戦いだ。すべての力を見せずとも、幽助を圧倒する戸愚呂弟の強さに誰も勝てるとは思えなかった。けれども、そこは少年漫画の主人公。最後は勝つのだろうといった予想も働かせながら、ではどうやって勝つのかといった疑問も抱いてページをめくっていく中で、仲間の危機があり悲劇的な離別もあってどん底へとたたき込まれたその先で、究極まで力を出し切った2人の激突が待っている。

 そこで浮かぶ高揚感は、エピソードを重ね、巻を積み上げる間に描かれた出会いがあり、成長もあったからこそ。一直線に決戦まで行くドラマにも興奮はできるが、じわじわと高まっていく感じは、エピソードの豊富な漫画なりTVアニメならではのものだと言える。戸愚呂弟と幻界との関係についても、原作ならもっと奥深いところまで近づける。

 少年漫画週刊誌に連載されていたこともあって、コミカルなシーンが挟まれるのも原作の特徴だった。そこに、デッサンのように描き込まれた右京の顔などが挟み込まれて、楽しげに見えても苛烈なストーリーが進んでいることを意識させた。肉体を持った役者を使い現実世界に物語世界を再現させたようなドラマではそぎ落とされた、剛柔を織り交ぜて読ませる冨樫義博の漫画センスを味わいたければ、やはり原作の漫画を読むなり、TVアニメを見る必要がありそうだ。

 戸愚呂弟と人気を二分すると人によっては思っている敵キャラ、美しい魔闘家鈴木にも会えるから。

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