声優・礒部花凜は“可愛い”で満足しない　「みんなが“自慢の推し”だと思えるような、求心力のある言葉を」

アウトプットが一番のインプット

——では、仕事を一生、続けていくためには何が必要だと考えてますか。

礒部：インプットする時間が大切だなって。何かに影響を受けるとか、尊敬するものを見つけることが、長くやっていく上ではとても大切かなと思っていたんですけど、価値観が揺さぶられる出来事があって。

——何があったんですか。

礒部：先日、ポルノグラフィティの新藤晴一さんがプロデュースされているミュージカルに出演させていただき、この話を晴一さんとしたんですよ。「私はずっとこの仕事をやっていきたいんです」って。だから、インプットしたいんだけど、その時間が満足に取れなかったりする。ありがたいことに、今、お仕事をたくさんさせていただいてるので、休暇はまとめて取れないし、何かをインプットしに行くより、ここは自分の体力を考えて、休養にあてたほうがいいとか、優先順位もあって……。「インプットしたいと思っていても、その時間を満足に割けていない気がする」っていう相談をしたら、晴一さんが「でも、アウトプットが一番のインプットじゃない？」とおっしゃって。

——どこか哲学的ですね。

礒部：「俺はそう思うよ」って。私はそれを聞いて、本当にそうだなって。晴一さんは毎回、魂を込めて演奏されているからこそ、そこでしか得られないものを感じてらっしゃるんだろうな、と私は解釈しました。

——アウトプットの場である舞台で受けたものがインプットになるってことなんですね。

礒部：そう、私はその感覚がすごくわかる気がして。プロとして立つ現場を学ぶ場にするべきではないとは思うけど、全力でやったからこそ、先ほど話をした“生きてる感覚”を味わったりする。きっと、実際にやってみないと、やっていないとわからないことがたくさんあって。そういうことの積み重ねで、インプットと考えなくても、レベルアップをしていることがあるっていうことをおっしゃっていたんだと感じました。今年の目標も「インプットする時間を増やして、いろいろ整えたい」と言ってたんですけど、晴一さんの言葉を受けて、ちょっと下半期の自分の価値観は変わりつつありますね。

——では、今、インプットにも繫がるような多様な表現の場があることはご自身ではどう考えてますか。

礒部：私、全部に本気！って感じてます。「どれが一番楽しいの？」「どれをやっていきたいの？」とか、いろいろ聞かれることもあるんですけど、私的にはどれも100%でやりたいっていう気持ちです。優先順位はなく、全部に本気で打ち込みたいし、まだやったことないことだってある。どんなことにも苦手意識を持たずに、どんどん挑戦していきたいと思ってますね。もちろん慣れていることよりも、初めてやることのほうがハードル高いし、大変なこともあるかもしれないけど、それでも全部、それぞれに乗り越えたいものや楽しさがあって。それは自分の中では優劣をつけられないものですね。両立できているかどうかは自分ではわからないけど、いろいろとやっているからどうっていう感覚はあんまりないかもしれない。強いて言えば、マネージャーさんのスケジュール管理が大変なくらいです（笑）。

——（笑）。それぞれの楽しさはどんなところにありますか。

礒部：技術的な細かいことはそれぞれにあると思うんですけど、根本的にその役を生きるっていう意味では、あんまり私の中では区別はなくて。表現するっていうことは一貫してあると思ってるんですね。もともと私は話すことが得意じゃなかったから、役として何かを表現できることが、自分にとって特別なこと。歌は歌で、伝えたいことがあるし、舞台やアニメもそう。それぞれが違うように見えて、私の中では割と根本的に同じなんですね。それに対して、技術的な面ではもちろん違いがある。声だと、自分の身体が全部出るわけじゃないけど、舞台上に立つと全部出ていて、なおかつ舞台上だからお客さんも近い距離で、生で観れる。そうなると、今、1対1で喋っているような表現のままというわけにはいかない。それぞれの役でいろんなことを考えるし、本当にまだまだ自分的に勉強しなきゃいけないことがたくさんあるので、それぞれの難しさみたいなところに、今は味を感じて楽しいなって思います。

——では、今回の写真集のように、礒部花凜として表現するときはどんなアプローチなんですか。

礒部：そこに存在していたらいいなっていう気持ちがあります、私が。

——どういうことでしょうか。

礒部：そこにいたらいいなって。何って言ったらいいんだろう。その瞬間を切り取りたいなと思ってもらえるような対象であったらいいなって。

——それはシャッターを切るカメラマンさんに対して？　それとも、写真集を手にする読者に対して？

礒部：全体的に、ですね。存在している、そこにいる、みたいな。適当な気持ちじゃなくて、私でいたい、私がそこにいるっていう……。それぞれのシチュエーションで、それぞれの衣装を着て、それぞれのテーマに沿って、身体を預けるみたいな感覚です。

——それは“演じてる”とは違いますか？

礒部：違いますね。役を演じるというよりは、そのシチュエーションの中にいる、存在するっていう。家にいる私ではないから、そう言われると、礒部花凜を演じてるのかっていう話になってきちゃうけど、それとは違うんですよね。その時々の世界に礒部花凜がいるっていう感覚です。

——家にいる礒部花凜はどんな女の子なんですか。写真集のインタビューを読んでもプライベートが……。

礒部：見えないですよね（笑）。

——見えないというよりは、もはやないんじゃないかって思ったりしたんですけど。

礒部：私、プライベートあんまりないです。

——仕事が好きだから？

礒部：そうですね。叶うなら24時間、仕事をしていたいくらい、仕事が好きかもしれないです。

——どうしてそんなに仕事が好きなんでしょうか。

礒部：それくらい仕事にかける思いが強いんですよ。芸歴が上がっていくごとに、仕事にかけてきた時間も多くなる。それに対して、私の中ではまだ全然できてない部分もたくさんあって。完全に自分が思い描いていた道を進んできたわけではないけれども、全力でやれることはやってきたという思いがあるからこそ、それを絶対に簡単には手放したくないんですね。その中で応援してくれる人が一人ずつ増えていって、去年の誕生日は、本当にたくさんの人がイベントに来てくれた。みんなの声が少しずつ大きくなっていくのを自分の中でも感じられていて。そのみんなの期待をいい意味で絶対に裏切りたくない。それが、プレッシャーになってるわけではなく、自分のポリシーというか、プライドですね。だからこそ頑張れるし、ずっとみんなの自慢の推しでいたいから、どんどんやりたいっていう感じ。

——これからの道はどう見えてます。

礒部：めっちゃいい感じになってます！

——あはははは。もう少し具体的に聞かせてもらえますか。

礒部：自分の中で、この年ぐらいにこういうことができるようになったらいいなというのはあるけど、それを明確に言うことはあんまりしたくなくて。それはあくまでも自分の中で決めていることだから、その時々でみんなと会って、いろんなものを共有して、一緒に歩いていきたいんですね。

——あんまり明確に言わないのはどんな理由からですか。

礒部：あまりに大きい目標を掲げて、私が発言してしまうと、それがみんなにとっての目標にもなってしまうじゃないですか。それが叶わなかったら、失敗なのかってなるのは絶対にイヤなんです。今まで、叶ったことも叶わなかったこともあるけども、私は失敗したなと1ミリも思ってないし、みんなにも思ってほしくない。今、一生懸命に仕事をしているし、絶対に自分のことを信じてあげたいから、「いいふうになる」とは思うけど、確かな目標をシェアするのはちょっと苦手かもしれない。

——確かにアニメ作品やどんな舞台に立つかというのは自分で決められることではないですもんね。

礒部：そうですね。私がこのアニメの声優をやりたいと言ってできるものではなくて。自分の実力もそうだし、いろんなご縁だったり、もちろん運もすごく大切な世界だなって思うんですね。自分だけでは決められないから、何が正解というのはないんじゃないかなって。だから、その時々の私の言葉を聞いてほしいし、みんなの声を聞かせてほしいし、そこで一緒に気持ちをすり合わせていって、1個1個の目標をお話していけたらいいなと思ってます。みんなが応援してくれる限り、私は頑張れるし、きっと私が進む先が正解だから、みんなにもついてきてほしいなと思いますね。

作品概要

【タイトル】礒部花凜 1st写真集 私めく
【発売日】2023年9月19日
【判型・仕様】A4変型 / 並製
【ページ数】104P
【撮影】藤原宏
【発売元】（株）KADOKAWA

https://www.kadokawa.co.jp/product/322304001378/

　『アイドルマスター シャイニーカラーズ』（月岡恋鐘）、『プロジェクトセカイ カラフルステージ！ feat. 初音ミク』（天馬咲希）、『ウマ娘 プリティーダービー』（ダイイチルビー）などの人気作品に声優として出演する一方、舞台・ミュージカル作品を中心に女優業も行う、今注目を集めている礒部花凜の1st写真集。本作は「Moment -瞬間-」というテーマのもと、今の礒部花凜のさまざまな魅力を、この一冊を通して表現している。また、声優 / 女優としてネクストステージへと進む彼女のこれまでに見せたことのないオトナな姿や表情も収録。初の水着&ランジェリーにも挑戦している。そして、彼女の現在地・未来に迫るロングインタビューも掲載。

・礒部花凜1st写真集 公式X（旧：Twitter）アカウント
https://twitter.com/karin_photobook
・礒部花凜 所属事務所ページ
https://www.amuse.co.jp/artist/A8915/
・礒部花凜 公式X（旧：Twitter）
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・礒部花凜 公式Instagram
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