【漫画】ケータイのカメラは銃より強い? 風刺の利いたデスゲーム『CAMERA-GUN』が恐ろしい
フミハルという名前の由来
――『CAMERA-GUN』誕生の経緯を教えてください。
フジタ:月刊マガジンの新人賞で佳作以上を獲るため、読み切りの原案をいくつか担当さんに送りました。最終的に人間ドラマ的な話と本作が候補に残り、デスゲームの読み切りという珍しさ、挑戦的な気持ちから本作の執筆を決めました。
当初は街中で行われるカメラを使ったゲームとして描くつもりでした。ただ、担当さんの助言もあって舞台を学校に、さらにはデスゲーム要素を色濃くして、世界観をわかりやすくなるように調整しました。
――登場人物は比較的少ないバトルロワイアル作品でした。登場人物はどのように練り上げたのですか?
フジタ:本作のテーマは“カメラを使う時に失われる当事者意識”だったので、主人公はカメラを使って現実逃避する気弱な少年。敵役は同じく現実逃避をしているのですが、カメラで平気で殺人を行う狂人。アイドル(幻想)を追い続けた本作の敵役・貞原に対して、父親と好きな人の死(現実)を受け入れた主人公が勝利する、という相反するキャラ構造を描けたとは思っています。ちなみに、主人公の下の名前は、週刊文春の文春を訓読みしたフミハルという名前にしました。記者はカメラが武器なので。
――昨今、ネット上に晒された人が“私刑”を受けて社会的に抹殺されるケースは少なくなく、“カメラ=拳銃”という設定は言い得て妙でした。 “スマホのカメラが拳銃になる”という設定はどこから思い付いたのですか?
フジタ:もともと自分自身カメラで撮られるのが好きではなく、昨今のネット上にアップされる喧嘩の様子やバイトテロといった不快な動画に辟易していました。とはいえ、「動画内で問題を起こす人間ではなく、それを撮っている人間のほうがむしろ悪なのではないか」という思いがふつふつと湧いてきました。
――カメラを向けることで迷惑行為を助長している可能性もある。
フジタ:はい。そこで「自分がカメラが嫌いなのは撮る側が持つ圧倒的な主導権にあるのだな」と思いました。自分がもしイジメられ、相手に過激な行為を強要され、それをネット上にアップされた場合、「完全に悪いのは自分になる、だとしたらカメラの持つ強迫性は拳銃のようだ」と思って本作が生まれました。
とにかく勢いを重視
――なぜカメラが拳銃になるのかなど、あまり説明はなされていませんでしたが、その狙いなどは?
フジタ:あまり文章で説明するデスゲームは勢いが失われると判断しました。ですので、序盤はかなり飛ばしています。
――ゲームマスターの正体を明かさなかった理由も勢いを重視したため?
フジタ:ラストはかなり悩みました。ネーム段階でこのゲームマスターと主人公の対話シーンはあったのですが、どうしてもここが一部の漫画に見られがちな、“作者の言いたいことを無理やりキャラに言わせている感”が出てしまうため、悩んだ末に全カットしました。もう少しゲームマスターやゲームについて深堀すれば良かったと思う反面、この内容を50ページでまとめられたことは良かったです。
――最近はSNSアカウントが街中で迷惑行為、変わった人を晒すケースが相次いでいます。こういった傾向についてどのようにお考えですか?
フジタ:一度の過ちで拡散され特定され、一瞬で人生が終わらせられるのはあまりに重すぎる罰な気がします。もちろん、自業自得と言われればそうですし、そういった私刑が犯罪抑止になっている部分も否めません。ただ、あくまでカメラが写すのは、撮影者個人の一視点のみです。晒された側がどういった背景を持っているのか考えなくてはいけないと思っています。
――最後にこれから漫画制作の予定など教えてください。
フジタ:原作者として雑誌の連載を目指して頑張っていきます。また10月ごろに漫画アプリのほうで読み切りが載ります。面白いので読んでください。Twitterはあまりつぶやくことはないのですが、自分の漫画に関する報告などをしていくのでフォローしてくれると嬉しいです。
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