『呪術廻戦』灰原雄はなぜ人気? 夏油傑&七海建人にもたらした“呪い”と、虎杖悠仁との共通点

『呪術廻戦』灰原雄はなぜ人気?

※本稿は『呪術廻戦』のネタバレを含みます。原作未読の方はご注意ください。

 好評放送中のアニメ『呪術廻戦』第2期。現在は「懐玉・玉折」編として、“最強の呪術師”五条悟と“最悪の呪詛師”夏油傑の高専時代の物語が進行している。

 20日放送の第3話(1期から数えて27話)では、新たなキャラクターとして「灰原雄」が登場。曲者の多い『呪術廻戦』という作品においては比較的珍しい、真っ直ぐで愛嬌のあるキャラクターであり、SNSの反響を見てもその人気ぶりが明らかになっている。

 感情が伝わりやすいクリッとした大きな目が特徴的な灰原雄は、呪術高専の学生(当時)で、五条や夏油の一学年下。“ナナミン”こと七海建人の同級生だ。

 作中でもとりわけ高い人気を誇る一級呪術師の七海と比較すると、そのキャラクター性がわかりやすい。七海は常に冷静沈着、合理的な思考の持ち主で、一見無愛想な実力者。灰原は対照的に、呪術師として突き抜けた実力は持っていないが、人懐っこく周囲を明るくするムードメーカーだ。「懐玉・玉折」編は五条と夏油を中心とした物語だが、同じく同級生で親友だった七海と灰原の物語も味わい深い。

 ここからはさらにネタバレを含むため、原作未読の方は注意していただきたいところだが、七海と灰原の物語は、リアルタイムの連載でも続いている五条と夏油の物語より圧倒的に儚く、それゆえに静かな美しさがある。

 灰原は活躍の機会が決して多くないなかでも、太陽のようなキャラクターで強い印象を残し、その「死」が夏油や七海にとって呪いに近いものになる。自身を慕ってくれた可愛い後輩を失い、“闇堕ち”のベクトルを強める夏油。そして、一時は「呪術師はクソ」と吐き捨て、一般企業に勤めることになった七海ーーこの2人に大きな影を落としているという事実だけとっても物語上の役割は大きく、登場機会と比較してファンの多いキャラクターだ。

 「懐玉・玉折」編で、灰原は物語から退場してしまう。しかし、灰原と七海の物語は、続く「渋谷事変」編でクライマックスを迎えるといえる。

 五条悟の“封印”と、一般市民の大量死。絶望的な状況の中で、敵を圧倒する実力を見せつける七海だが、その代償として体力を削り取られていく。そんななか、主人公・虎杖悠仁の命を狙う特級呪霊・真人と遭遇し、絶体絶命。虎杖に「後は頼みます」と一言残し、退場してしまうことになるが、「後は頼む」は灰原から七海への遺言でもあった。七海はその言葉が虎杖にとっての“呪い”になってしまうと葛藤したが、バトンを渡したのである。

 考えてみると、灰原と虎杖は似たところがある。両者とも素直で人懐っこく、呪術師には珍しい“根明”なムードメーカーだ。かつて「クソ」と断じた呪術師のなかで、前向きなエネルギーのある二人のバトンを繋いだのは、冷徹に見えて情が深く、周囲から敬意を集めている七海らしい。

 このように、夏油、七海、そして虎杖という重要キャラクターとの関係性において、灰原雄は存在感を示し、いまも人気を維持している。背景に多くの物語を背負っている、彼のスピンオフも読んでみたいものだ。

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