今年上半期で注目すべき新規の「商業施設」はどこ? 専門誌「月刊 商店建築」が100ページ超の大特集で魅了に迫る

注目するべき新規の商業施設はどこ?

 株式会社商店建築社は、商業空間デザインに特化した月刊誌「月刊 商店建築」の最新号「2023年7月号」を、6月28日に全国書店及びオンライン書店で発売した。2023年上半期における注目の商業施設を、100ページ超にわたり、一気に掲載する特大号だ。

 「商店建築2023年7月号」の大特集「〈保存版〉2023年 上半期注目の新規プロジェクト」は、今の商業空間づくりにおけるトレンドが掴める「保存版」の一冊。「現在の商業開発の動向を知りたい」「最新の商業施設が、どんなテナント構成になっているのか知りたい」「いま、商業空間において、どのようなコンセプトやデザインが求められているのかについてヒントが欲しい」そう考えているディベロッパー、ビルオーナー、店舗オーナー、建築家、インテリアデザイナーの方々に役立つ資料として制作された。

 掲載プロジェクトは、「東急歌舞伎町タワー」「東京ミッドタウン八重洲」「エスコンフィールドHOKKAIDO」「軽井沢コモングラウンズ」「クルックフィールズ地中図書館、コクーン」「the RECORDS」。

 こうしたプロジェクトには、最先端の商業空間におけるデザインのトレンドだけでなく、「ホテル」「横丁」「ラウンジ」「複合型の飲食店」「グリーン」「アート」といった、いま複合開発で求められる要素がトータルに網羅されている。各プロジェクトの見どころを紹介する。

■東急歌舞伎町タワー(新宿) ( 設計/久米設計 東急設計コンサルタント)

 「東急歌舞伎町タワー」は、ホテルや映画館、劇場、ライブホールなどのエンターテインメント機能に特化した、地下5階地上48階建て、高さ約225mの高層複合施設。商業施設「新宿TOKYU MILANO」の跡地に計画され、歌舞伎町という街のレガシーや文化、観光、まちづくりが融合した再開発として注目されている。本計画は、街の核となる都市観光拠点になり、街に回遊性とにぎわいを創出するという役割も担っている。外装デザインは、建築家の永山祐子氏が手掛けている。

 高層階には、「HOTEL GROOVE SHINJUKU, A PARKROYAL Hotel」と「BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel」という、ニつのホテルが入っている。前者は「まちを遊びつくすための拠点」をテーマにしたライフスタイルホテルで、後者は「地上の喧騒から離れた特別な空間を楽しむ」ためのラグジュアリーホテル。 

■東京ミッドタウン八重洲(東京) (設計/日本設計 竹中工務店 PICKARD CHILTON INTERNATIONAL インフィクス)

 東京駅の東側、八重洲口では「八重洲二丁目北地区」「八重洲二丁目中地区」「東京駅前八重洲一丁目東B地区」の3地区で再開発が行われている。その第1弾として、「東京ミッドタウン八重洲」が八重洲二丁目北地区に開業した。店舗、ホテル、オフィス、小学校、バスターミナルなどで構成される大型複合開発だ。三井不動産が展開するブランド「東京ミッドタウン」として、六本木、日比谷に続く3施設目となる。

 東京ミッドタウン八重洲のコンセプトは「ジャパン・プレゼンテーション・フィールド」。「JAPAN VALUEを世界に発信しつづける街」という理念の下、世界中から人や情報、モノ・コトが集まり、交わり、新しい価値を生み出し発信していく場所を目指している。
 編集部として注目したのは、2階に広がる820平米の広大な「ヤエスパブリック」。誰もが利用可能な公共スペースで、食事や休憩、ちょっとしたノマドワークなど、さまざまなシーンに対応する。こうした街の広場のような「居場所」をいかにデザインするかは、いま商業空間づくりにおける最大のテーマと言える。

 ■エスコンフィールドHOKKAIDO(札幌) (設計/大林組+HKS 乃村工藝社、スペース、サポーズデザインオフィス、丹青社)

 「北海道ボールパークFビレッジ」は、日本ハムファイターズの新球場という役割だけでなく、一つの複合商業施設という性格を持っている。そして、約32ヘクタールという広大な敷地の中で、自然と共存するウェルネス要素や、文化の発信も目指している。その中にあるプロ野球スタジアム「エスコンフィールドHOKKAIDO」は、フィールドレベル、メインレベル、スターレベルと3層にわたって観客エリアが計画されている。フィールドを囲う観客席は、スタジアムのどこからでもプレーが見やすいよう「すり鉢」状の断面構成となっている。また、プレミアムエリア(バルコニースイート、ドコモクラブラウンジ、パナソニッククラブラウンジ)や、施設内の象徴的な建造物「TOWER11」(ホテル、温泉&サウナ、ミュージアム)では、従前の観戦形式とは異なる、フィールドが間近で見られる「砂かぶり席」、ホテル客室からの観戦、球場内の温泉、サウナといったエンターテインメント施設からの観戦など、多彩な体験を提供している。

 ■軽井沢コモングラウンズ 軽井沢書店 中軽井沢店(軽井沢) (設計/クライン ダイサム アーキテクツ)

 軽井沢の緑あふれる敷地に生まれた「Karuizawa Commongrounds(軽井沢コモングラウンズ)」は、書店やカフェ、物販店、インターナショナルプリスクールで構成される複合施設です。かつて大学のサマースクールだった建物をリノベーションし、土地の記憶と生態系を継承しながら、現代のライフスタイルに合った商業施設へと改変した。コアとなる「軽井沢書店 中軽井沢店」が入る書店棟には、施設の入り口からウッドチップが敷かれた小径を通ってアプローチ。2階建ての建築は構造を残しつつ、スカートのように伸びやかな大屋根が架けられ、施設動線から緩やかに誘引されるような設えとした。また、内部の仕上げは極力、素材や建材自体が持つ表情を生かし、肩肘張らない、ありのままの姿を志向している。ガラス張りの大開口からは軽井沢の自然を眺めることができ、店内からも自然の中で過ごす居心地良さを感じられる空間となっている。

■KURKKU FIELDS 地中図書館、villa cocoon(千葉・木更津) (設計/中村拓志& N A P 建築設計事務所)

 千葉・木更津に、「農」「食」「アート」などをテーマにしたサステイナブルガーデン&パーク「KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)」がある。プロデューサーは音楽家の小林武史氏で、2019年に開業。

 今回、その敷地内に、二つの施設が加わった。一つは、「地中図書館」。建築家の中村拓志氏が設計を手掛けたライブラリー。晴れた日には畑を耕し、雨の日には読書をする。そんな暮らし方を想定して設計された。建物は、緑豊かな丘の下に埋まっており、内部には、ライブラリーや、円形ドーム型の読み聞かせホールがある。

 もう一つは、宿泊施設「cocoon(コクーン)」。クリックフィールズ全体を見渡せる丘の傾斜地に建てられた。「生命を包む“繭”」をモチーフにし、コミュニケーションが生まれる場所や、体験したことを咀嚼し自分と向き合える場所など、多様な居場所がつくられている。また、共同キッチンがあり、農園で採れた野菜を調理することもできる。プロデューサーの小林さんは、「今は時間をお金に変えるような忙しない社会ですが、ここでは、いろいろなものに出会い、自由に想像を巡らせながら、さまよってほしい」と話す。時代の最先端をいくサステイナブルな複合施設が、現在進行系で進化中だ。 (デザインディレクション/皆川明 設計/i k k e n 設計室)

■the RECORDS(千葉) (トータルディレクション:シロアナ 寺島敏貴 設計/建築基本設計/上領大祐建築設計事務所 上領大祐 ホシガラス 高橋好和 建築実施設計/千都建築設計事務所 内装/SPACEMAN cotto 八柳有子)

 千葉駅から徒歩数分の位置に、飲食店やオフィスなどで構成される複合施設「the RECORDS(ザ・レコーズ)」が誕生。建主は、千葉市を拠点とするディベロッパー、拓匠開発。宅地造成や注文住宅の販売を行いながら、千葉市を盛り上げることを目的に、ベーカリー、カフェ、コミュニティースペースなどを展開し、住宅を売って終わりではない、地域との持続的な関係を築いてきた。

 広大な千葉公園に面して立つ「the RECORDS」は、約35年前にビジネスホテルとして計画された建物の改修計画。かつて駐車場だった1階はフードホールへと姿を変え、上層階には自社オフィスや会員制の飲食店が設けられている。また、2階以上の床に吹き抜けを複数設けることで、緑豊かな公園の居心地を屋内に引き込み、その雰囲気が吹き抜けを介して空中階にまで波及する設計となっている。敷地内に生まれたにぎわいが、千葉市全体に広がっていくことを目的に計画されている。

■雑誌情報
月刊 商店建築 2023年7月号
発売日:2023年6月28日(水)
価格:定価2,358円(本体2,144円)
版型:A4
発行:株式会社 商店建築社

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