新垣結衣の主演で注目『違国日記』の魅力とは? 35歳の小説家と両親を亡くした中学生の交流
『FEEL YOUNG』(祥伝社)2017年7月号から連載がはじまり、多くの人の心に寄り添ってきた『違国日記』が2023年7月号で幕を閉じる。そして6月6日、終わりを迎えた本作を祝福するかのように実写映画化が発表された。
新垣結衣が主演を務めることもあいまって、発表直後からTwitterで「映画化」や「ガッキー」といった言葉がトレンド入りするなど盛り上がりを見せている。本稿では作品の内容とともに新垣が演じる35歳の女性・高代槙生はどのような人物か振り返りたい。
突然の交通事故で両親を亡くした中学生の少女・田汲朝。彼女を引き取ることとなったのは、朝にとって叔母にあたる小説家・槙生だった。朝は槙生とふたりで暮らす日々を重ねるなか、さまざまな悩みを抱きながら年を重ねていく。漫画賞「このマンガがすごい!」や「マンガ大賞」に2年連続ランクインし、累計発行部数125万部を突破した作品だ。
本作の作者・ヤマシタトモコ氏曰く、槙生はドラマ『エージェント・オブ・シールド』に登場する俳優「ミンナ・ウェン」のような三白眼の女性をイメージし考えた人物だという(参考:あしたメディア「若者が若者のうちに正しく怒れるように『違国日記』ヤマシタトモコ インタビュー」)。朝にとって身近な“大人”であり、そのビジュアルからクールで狼のような人物として描かれる槙生であるが、親しみやすさを感じる一面も見受けられる。
朝が槙生と暮らし始めたばかりのころ、朝は洗い物のたまったシンクや本や書類が散乱した部屋を目にし、槙生の暮らす環境をジャングルと称した。また朝は槙生と意思疎通をうまく図ることができず、朝が「もしかして人見知り?」と聞くと槙生は「自分が生き物と長時間同じ空間にいるのがしんどい人間なのコロッと忘れてて…(略)」とこぼした。
そうじが苦手で(もしかしたらそうじを必要としていない可能性もあるが……)、人との関わりも上手とは言えない槙生。ただ思春期を迎え、さまざまな悩みを抱くこととなる朝に、槙生は芯のある言葉で価値観が変化するきっかけを与える。
そのひとつがコミックス3巻「page.13」で描かれたエピソードだ。些細なすれ違いからケンカをした朝と槙生。怒る朝に対し、槙生は自分が15歳だったころを振り返りながら朝の隣に座り言葉をかける。
“あなたがわたしの息苦しさを理解しないのと同じようにわたしもあなたのさみしさは理解できない/それは/あなたとわたしが別の人間だから/…ないがしろにされたと感じたなら悪かった/だから……歩み寄ろう”
直後に朝は「…わかり合えないのに?」と発するが、槙生は「そう/わかり合えないから」と言葉を返す。15歳の朝にとって槙生の言葉はある種の冷徹さを孕んだものとして届いていたかもしれない。ただ、このあと朝はその日のことを言葉で振り返った。
“砂漠の/オアシスの水はわたしをどんなに慰めてもわたしの体とは決して融け合わないのだった/わたしはそれを知らなかった”