米テックメディアCNETが労働組合設立 AI活用の広がりで本格リストラを懸念
米テックメディア「CNET」に関わる編集者や記者が中心となり、5月16日に労働組合設立を明らかにした。「CNET」はすでに2022年11月から記事の作成にAIを活用しているが、今回の労組結成はそうしたAIの取り扱いやリストラに反発するものだ。
簡単な文章の生成であればAIが実用の域に達しているといわれ、メディアでは活用の動きが広がっている。今後、業界内で編集者や記者の反発を生むのは必至で、同様の動きが加速するかどうかに注目である。
メディアによるAIの活用は「CNET」にとどまらない。すでにイギリスの大衆紙「デイリー・ミラー」「デイリー・エクスプレス」などを発行するリーチは、今後、記事の作成にChatGPTの活用を進めていくと発表した。
アメリカの「バズフィード」は、すでに一部の記事をAIに製作させているという。雑誌「スポーツ・イラストレイテッド」「メンズジャーナル」を発行するアメリカのアリーナ・グループも、記事の作成にAIを活用することを発表している。
今後、報道、出版の分野でAIが担う仕事はますます増加するのは確実である。確実に、記者やライターの仕事の多くはなくなると想定され、とくにプレスリリースをもとにした記事の作成であればAIが担うと考えられる。
そのため、今後は記者のリストラも加速するものと思われる。米テックメディアCNETの労働組合設立もこうした動きを受けてのものであろう。
現にメディア関係者の間で、AIに対する反発や懸念は強まっている。日本でも、5月17日、一般社団法人日本新聞協会は生成AIの普及が加速している現状を踏まえ、「生成AIによる報道コンテンツ利用をめぐる見解」を発表した。
日本新聞協会の発表によれば、「他人の著作物等を AI が無断利用したり、AI を不適切な形で使ったりする“負の影響”も広がっている」とし、「AI 技術の進歩に法律や社会制度が追いついておらず」「民主主義を下支えする健全な言論空間を守る観点から課題が生じ」ていると述べ、報道関連分野における懸念を述べている。
日本でもAIの法規制を検討する動きはある。しかし、AIの進化は早く、なおかつ便利である。ルールや法の整備を検討しているうちに日常レベルまで普及してしまいそうで、規制をはかるのは現実的ではないという見方もある。
メディア界では、少なくとも人間の記者はより専門性が高かったり、現場に出る仕事を担うなど、AIとの棲み分けが求められることになりそうだ。今後の動向を引き続き注視していきたい。