『鬼滅の刃』“風柱”不死川実弥が炭治郎にキれた本当の理由とは? 「柱合裁判」の真実を考察
不死川実弥が最後に見せた“兄の笑顔”とは
また、この「柱合裁判」の時点では、実弥は、弟の玄弥が、実は「鬼の体を喰らうことで、短時間の鬼化を可能にする」特殊な咬合力と消化器官の持ち主であるということを知らない。鬼殺隊の剣士には不可欠な「呼吸」を使えない玄弥は、鬼を喰らうことで、鬼と対等に戦うための力を得ていたのだ。
つまり、禰豆子を認める認めない以前に、実弥の弟こそ、ある意味では、(彼にとっては存在してはならないはずの)「善良な鬼」だったというわけである。これは、逆にいえば、“人であること”をやめてまでも兄を助けたいという玄弥の強い覚悟の表われであり、その覚悟は、無限城における黒死牟との死闘を経て、ようやく実弥にも伝わることになる(むろん、玄弥の兄への想いは、実弥はとうに気づいてはいたのだが――)。
さらには、実弥もまた、玄弥とは違う種類の異能の持ち主なのだが(彼には鬼を酩酊させる「稀血」が流れている)、鬼を酔わせる稀血にせよ、鬼化を可能にする咬合力と消化器官にせよ、そんな“強い力”を持った子として自分たちを産んでくれたのは、他ならぬ母であった、ともいえるだろう。
いずれにせよ、長い戦いを終えたのち、実弥は「善良な鬼」もいたということを認める。そして、人間に戻った禰豆子に心から詫びることになるのだが、その時に彼が見せた温かい笑顔がなんともいえず、良いのだ。そう、それは、あらためていうまでもなく、本来は禰豆子ではなく、玄弥が見たかったはずの頼れる“兄の笑顔”であった。
※禰豆子の「ね」は「ネ+爾」、鬼舞辻の「つじ」は一点しんにょうが正式表記。