アナウンサー・吉田明世 初絵本『はやくちよこれいと』で歌舞伎の十八番「外郎売」をアレンジした理由とは。


 アナウンサーの吉田明世が初の絵本『はやくちよこれいと』を出版。絵本専門士・保育士の資格を持つ彼女が、最初の絵本の題材として選んだのはアナウンサーが発声や滑舌の練習として使う「外郎売」(ういろううり)。歌舞伎の十八番のひとつとしても知られるこの長台詞の物語を子ども向けにアレンジした。

一粒飲むと滑舌が良くなるという「外郎(ういろう)」を売り歩く商人をチョコレートの魔人に見立てて「はやくちよこれいと」を一粒食べれば、言葉遊びが始まるという仕掛けたっぷりの絵本。声のプロがこの絵本を作ったきっかけ、そしてその楽しみ方について伺った

絵本専門士の資格を取得、改めて知った絵本の素晴らしさ

―初の絵本の出版おめでとうございます。吉田さんがこの絵本を作ることになったきっかけについて教えてください。

祖母が保育園を運営しておりまして、実家の横には保育園があるという環境で育ちました。私自身もその保育園に通っていたり、大きくなってからはお手伝いさせてもらっていたこともあり、保育園という場所は私にとってとても馴染み深い場所でした。私自身もいつか保育士の資格を取りたいなという思いはずっと持っていました。

大学を卒業してからはTBSでアナウンサーとして働くことになりましたが、仕事が忙しくて保育士の勉強をすることはできませんでした。けれど、第一子の妊娠をきっかけに産休に入るまでに時間ができて、「保育士の資格を取るなら今だ!」と一念発起して保育士の資格を取りました。

娘が生まれた後は、フリーアナウンサーとして活動していたのですが、なかなか保育士の資格を活かした仕事はできず。そこで、アナウンサーでありながら、保育士の資格を持っている自分に何かできることがないかなと考えた時に、絵本の読み聞かせをしたいと思ったんです。そのタイミングで絵本の歴史や仕組みを学んで絵本の魅力を広く伝える絵本専門士の資格があることを知って、絵本について多角的な面から学びました。

 絵本専門士の資格を取った後、絵本の読み聞かせイベントの開催が決まったんですけど、ちょうどコロナ禍に入ってしまって色々なイベントが続々と中止になってしまったんです。ネットでの読み聞かせなどができないかとも考えたのですが、権利の問題などでそれも叶わず。もし、自分が絵本を作ったらオンラインで読み聞かせイベントを開催できるし、色んな可能性が広がるなと思い、絵本を作ろうということになりました。

子育てを通じて絵本の見方が変化していった。

―絵本専門士の資格を取ったことで、絵本との向き合い方は変わりましたか?

そうですね。まず、自分の子育てにおいてですが、絵をよく見るようになりました。大人って文字があると絵よりも文章を読んでしまうんですよ。だから、どんどんページをめくってしまうんです。でも、子どもは文字ではなく絵を見ているので、子どもにしかできない発見があるんですね。絵本専門士の資格の勉強を通して「絵本の主役は絵なんだ」ということを改めて実感して、絵からくみ取れる作者の想いなどを読み解くのが楽しくなりましたね。

―ご自身の幼少期を振り返って、絵本の原体験はありますか?

絵本はもちろん大好きでした。レオ・レオニの『スイミー』や『かいじゅうたちのいるところ』などが好きだったんですけど、私は三人兄弟の末っ子だったので、絵本を読んでもらう時間っていうのがあまりなかったんですよね。でも逆に自分が母親になって子どもが生まれたばかりの頃って、何をして過ごしていいのか分からず。そんな時に子どもと過ごす時間として救われたのが絵本だったので、母になって改めて絵本の存在の大きさを実感しました。

今は、子どもたちも絵本が大好きで、「ママこれ読んで」って自分で持ってきてくれるようになっていますね。娘は最近『ノラネコぐんだんパンこうじょう』が大好きでいつも読んでいます。

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