日本で唯一の文化財専門誌はどんな特集をしている? 昭和38年から続く『月刊文化財』の魅力を探る
令和4年(2022)11月18日、国の文化審議会によって新たに美術工芸品の国宝指定が答申された。中でも注目されているのが、「北海道白滝遺跡群出土品」である。約1万5000年~3万年前に作られた石器群などで、史上初の旧石器時代からの国宝答申であり、指定が正式に決まれば“最古の国宝”になる見通しという。
北海道新聞の報道によれば、国宝指定が答申されてから初めての休日になった11月19日~20日は、遠軽町埋蔵文化財センターに合計300人を超える見学者が訪れたとある。さらに先月は建造物の分野から、富山県高岡市にある「勝興寺」の本堂などの国宝指定が答申され、このたび正式に指定された。
12月18日まで東京国立博物館で開催されている「国宝展」は盛況であるという。日本各地では自治体を中心に、世界遺産登録を目指す運動が盛んになっているが、実は国宝がもつブランド力も想像以上に大きいことがわかる。
国宝と比べると目立たないが、重要文化財(以下、重文)に指定されても結構話題になる。特に近年は、戦後の建築の重文指定が目立つ。勝興寺の国宝指定と合わせて、昭和29年(1954)に竣工した「名古屋テレビ塔」の重文指定が答申された。また、大阪府では将来的な「太陽の塔」の重文指定を目指し、学術的観点から調査を進めるという報道もあった。
こうした文化財のニュースだが、新聞社やネットニュースは基本的に淡々と文化庁の公式発表をもとに報じている。ローカルメディアが現地を取材することはあるものの、なぜ指定されたのか、学術的価値はどんな点にあるのかなどの専門的な知見をニュースから得ることは難しい。
個々の文化財のより詳しい情報を手に入れたい。そんなときに読んでほしい雑誌が『月刊文化財』である。昭和38年(1963)に創刊され、文化庁の監修のもとで第一法規が発行している、唯一の文化財専門月刊誌だ。ストレートなタイトルも実にいい。文化財の情報が載っていることが、誰でもわかるではないか。
毎年、美術工芸品は1回、建造物は2回、新しく国宝や重文が選ばれることが多い(様々な事情で例外もあるが)。新たな文化財が答申された際は、『月刊文化財』に詳しい解説や写真が掲載される。内容は真面目でお堅いのだが、文化財の修理報告書や大学教授が出す論文よりは平易だし、コンパクトに情報がまとまっているのがいい。
新しい文化財が決まるとTwitterで話題にする人もたくさんいるし、先に紹介した白滝遺跡群の出土品のように、ニュースが報じられた翌日は数多くの見学者が訪れることもある。そういったニュースをきっかけに文化財に興味をもち、一歩踏み込んだ情報を得たいと思ったら、『月刊文化財』はおすすめしたい雑誌である。
文化財の情報は意外にもインターネットで入手することが難しい。個人で文化財巡りをしている人がホームページを作っている例もあるが、間違いも少なくないうえ、ネットニュースも「重要文化財に登録」などとよく説明を間違える(登録ではなく「指定」が正しい)。その点、『月刊文化財』は文化庁の監修を受けているとあって、安心して読める。
そんな『月刊文化財』は東京国立博物館のミュージアムショップでも売られているが、一般の書店では滅多に置かれていないため、入手が難しかった。それが近年、オンライン書店「Fujisan.co.jp」でも購入することができるようになったのだ。すべてのバックナンバーを入手できるわけではないが、この機会に買い求めてみてはいかがだろうか。