「2022年コミックBEST10」『三日月よ、怪物と踊れ』は伝奇ロマンの傑作だ 漫画ライター・島田一志編
「少年ジャンプ」の新連載に期待
6位、『ALIENS AREA』は、人知れず地球を訪れている異星人たちを取り締まる警視庁公安部外事第5課――通称「外5」の男たちの物語。絵柄は少々荒削りではあるが、かえってそれが妙な迫力を生み出しており、また、物語作りもキャラ立ても新人ばなれしていて、巧い。途中からバトル要素が少なくなり、日常的なエピソードが増えたせいかもしれないが、短期間で連載は終了した。ただ、荒木飛呂彦などの例を挙げるまでもなく、「少年ジャンプ」の作家には、独自の感性や強烈な個性を貫き続けて最後にはブレイクする、というケースも少なくないので、本作の作者も、周りの意見や漫画界のトレンドなどに流されることなく(また、本作の連載が短期で終わったことにもめげることなく)、この先も自分の描きたい世界を描き続けてほしい。
7位の『緑の歌―収集群風―』は、他の9作と比べ、あまりにも系統(ジャンル)が異なるため少し悩んだが、良いものは良い、ということで選んだ。台湾のイラストレーター兼漫画家、高妍が描いた爽やかな青春物語。音楽や文学、そして漫画が、国境を超えて人と人とを繋いでいくということを改めて教えてくれる佳作だ。キャラクターの所作や表情を、複数のコマを使って丁寧に描くことで生まれる独自の“間”も素晴らしい。
8位の『人造人間100』は、まだ始まったばかりの作品だが(「週刊少年ジャンプ」2023年1号から連載開始)、「面白い少年漫画」というものはたいてい1話目を読めばわかるものである。この世に100体存在するという血に飢えた人造人間の集団に家族を惨殺された少年が、世界を救うため、ある女の人造人間(人造人間No.100)と手を結ぶ復讐劇。本作もまた、前述の『ヘルハウンド』同様、“本来は手を結ぶはずのないふたりによるバディ物”であり、今後の展開に期待したい。
9位の『ベルセルク』は、周知のように、作者・三浦建太郎の逝去により連載が中断していた作品だが、今年の6月から、三浦の朋友・森恒二(監修)と、かつてのスタッフたち(「スタジオ我画」の6名)の手によって連載が再開した。三浦が描いた作品以外は認めない、というコアなファンもいるかもしれないが、私としては、このメンバーは現実的に考えられる最高の布陣であると思うし、そもそも、もう二度と読めない、と思っていた作品の続きが読めるというのは喜ばしい限りである。
さて、ラストの10位には、先ごろ完結した『東京卍リベンジャーズ』を選んだ。2022年の年間ランキングにいまさら「東リベ」でもないのでは、という意見もあるだろうが、しかし、かの国民的ヒット作『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴)の連載終了後、もっとも漫画界を盛り上げてくれたのはやはりこの作品であっただろうと私は思う。最終回のケリのつけ方も、極めて少年漫画らしい見事な大団円であった。