【漫画】貧民街で生まれ育った男女、その夢の行方やいかに? SNS漫画の大作『いとしのベティ』がドラマチック

――『いとしのベティ』がTwitterでかなり読まれていますが、ご自身としてはいかがですか。

川松冬花(以下、川松):この作品は「小学館新人コミック大賞」で奨励賞をいただいたものです。でも折角なのでTwitterに上げてみたら、たくさん読まれて嬉しいですね。Twitterの漫画にしては常識的なページ数ではないので(笑)、絶対バズらないと思ってました。もともと話を考えるのが好きで、この作品ではレトロ映画っぽい作りにチャレンジしています。

――読者を惹き付ける工夫などはあります?

川松:4ページを目途に展開していく、という構成で書くようにしています。展開するところで次も読みたくなるような引きを作ったから、80ページも読んでもらえたのかもしれません。

――本作の着想についても教えてください。

川松:もともと中学生の時に考えた作品です。学校で映画『スタンド・バイ・ミー』を観て、リバー・フェニックスの美しさに号泣したんですよ。その帰り道に1960年代のアメリカを舞台にした原案を思い付きました。

 実は私、本業がフラメンコダンサーで教室を持っているんです。この話を着想した時は踊りのコンクールに出場したりで漫画を描く時間もなく、いつかダンスが上手くいったら形にしようと考えていたんですよ。

――制作時間はどれくらいかかりました?

川松:普通に働きながら描いたのですが、賞の締切まで1カ月しかなくて死ぬかと思いました(笑)。週刊の漫画よりも多いページ数ですから、終盤は背景を描き切れない部分もあったのが心残りではあります。3日くらい寝ないで描いていた時はさすがに体調を崩しましたね。ワーカホリック気質なので、ダンスと漫画、あと病院の事務で働いたりもしてます。

――踊りと漫画って共通点を感じたりはしますか?

川松:ダンスはお客さん、漫画は読者のことを考えなかったら、誰の目にも留まらないですね。ただ踊っても「初めましての人がただクルクル回っている」くらいにしか思われないですし、観てくれる人や読んでくれる人が何を求めているのかを考えるのは似てます。

 結局、個人のこだわりはコアなファンではない、一般の人にとってはどうでもいい。『ワンピース』や『ドラゴンボール』って本当にわかりやすいじゃないですか。踊りも漫画もそういうポピュラーなものを作りたいですね。

――では『いとしのベティ』は、読者についてどのように考えて書いたのでしょう。

川松:上の年代の方には「こんな映画あったよな」と懐かしんでほしいし、若い人には「こんな時代があったんだ」と新鮮に思ってほしかったんですよ。実際そういうリアクションをしてくれる方もいて嬉しかったです。

 フラメンコは、昔のジプシーがやっていた踊りをやり続けています。その一方でヒップホップを取り入れた新たな世代のフラメンコもありますが、私はレトロなものをリバイバルとして形にすることが好きなんですよ。

――では最後に漫画家としての今後の展望について教えてください。

川松:フラメンコを踊れて、漫画も描ける人は世の中にいないはずなので、この道を突き進みたいです。それから新しい読み切り漫画が「サイコミ」で配信されるので、こちらもぜひ読んでください。

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