87歳の現役スキー教師・平沢文雄「生きがいとは希望であり可能性」「スキーは今だにわからないけど、毎年上手になっている」

 ふと平沢のデスクを見ると、A4判の紙に何やらぎっしり書き込んだものがたくさんある。それは何か尋ねると、スキー技術のことを書いた原稿だという。それは事務所に出社した際、毎朝欠かさず続けてきたことで、積もりに積もった40余年分の原稿はファイルにまとめられ、この目で確認しただけでも数十冊に及ぶ。

 「スキー技術のことを考えれば考えるほど、真実(真理)がわからなくなる。玉ねぎを一皮むくと再び新しい皮が出てくるようにね。1つ答えが見つかると、わからないことがまた出てくる。だから、できるだけわかりやすい言葉で書き残しておこうと思っています」

自分は毎年、上手になっていると思う

 生涯現役スキー教師を目指す平沢の原動力の一端を垣間見た気がした。そんな平沢にシニアスキーヤーにどんな指導を心がけているのかを聞いてみた。

  すると……「私がやっている指導の対象者は主に80代。もちろんスキー技術を手段とし、上達を目的としていますが、教えている内容は彼らに生きがいを感じさせること。生きがいっていうのは可能性。希望を持ったときに“またやりたい”って気になるんですね」

 事あるごとに「私は変人だから」と言う平沢。どんな指導法が1番いいのか、さっぱりわからないとも言う。

 「あなたが上手になりたいと思いスキー学校に入ってきて、私がその夢を叶えられるかという問題なんです。だから、万人に共通する1番いい方法なんてわかりませんよ」

 まもなく米寿を迎える平沢の心を動かすスキーの魅力を聞くと……「今まで自分の中で滑りの実力が落ちたって感じた経験がありません。自分では毎年、上手になっていると思ってる。それは、急斜面やアイスバーンを滑ればわかるんですが、まったく問題ありません。だから私は去年よりもうまくなる自信があるのです(笑)」

 若者ならいざ知らず、中高年になると気持ちいいスキーをしようと思えば緩斜面を選ぶのは当たり前のこと。ましてやアイスバーンなどもってのほかだ。

 「あの斜面を攻略したい。もっと上手になりたいから、今もスキーを続けているんです。そして自分が見つけた方法(シニアでも楽に効率よく滑れるテクニック)を伝えていくのが今の私なんですね」

『シニアのためのベストスキー』(平沢スキー研究所)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる