『ぐりとぐら』山脇百合子さん死去 宮崎駿監督も脱帽した絵の魅力を振り返る

 累計2150万部の人気絵本シリーズ『ぐりとぐら』の挿絵で知られる、画家の山脇百合子さんが9月29日、死去したことが伝えられた。姉で児童文学者の中川李枝子さんとタッグを組み、『そらいろのたね』や『いやいやえん』などの人気作を多数発表。素朴かつチャーミングで、時代に左右されない普遍性のある山脇さんの絵を思い浮かべ、別れを惜しむファンの声がSNS上にもあふれている。

 山脇さんの絵に引き込まれたのは、一般の読者だけではない。姉の中川さんと交流があり、たびたび対談も行っているスタジオジブリの宮崎駿監督は、二人の作品をこよなく愛しており、かつて『ぐりとぐら』の映画化に向けて動いていたことも知られている。

 自身も漫画家・アニメーターとして絵を描き続けてきた宮崎監督は、『いやいやえん』や『ぐりとぐら』に触れて、「この絵にも僕は参った。こういう邪念のない絵は、どうしていいかわからない。後ろ姿を見ただけで、本当にこの子のことをかわいいと思って描いているとわかる」(中川李枝子 × 宮崎駿、『ぐりとぐら』を語る。/Casa BRUTUS、2014年5月6日掲載)と脱帽している。絵を描き続けていると、普通は手慣れてきて「ゴールのわかる線」ばかり引いてしまうようになるが、山脇さんが引く線は「どこに行くかわからない」。初心で描いた力があり、そこに胸を打たれるのだという。

 『ぐりとぐら』は1963年に初めて絵本になり、その3年後、1966年には英訳され、イギリスで発売。現在まで9言語に翻訳されており、多くの国で愛されているが、絵の魅力が大きな要因のひとつになっていることは間違いないだろう。山脇さんの絵は「シンプル」と表現されることも多く、だからこそ読者を選ばないのかもしれない。

 あらためて『ぐりとぐら』をじっくり読んでみると、その絵は決して説明過多にならず、子どもたちの想像力を引き出す純粋さ、優しさに満ちているように思える。あらためて、心よりご冥福をお祈りしたい。

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