ジャンプが生んだ最大の奇才・漫☆画太郎 スマホ脳でストレスフルの現代人にこそおすすめの短編作

 ここでおすすめの作品をいくつか厳選してご紹介したい。

『Superはやっとちりくそババア』『学校』

 いずれもジャンプに掲載された読み切りで、短編集『くそまん -サイテーの漫画短編集-』に収録。『Superはやっとちりくそババア』は画太郎の十八番であるコピーギャグと、もはや芸術と言っていい破天荒なババアを堪能するには最適な漫画だ。

 『学校』は、転校してきた山田太郎が様々な学校行事や教師との出会いを経験しながら、卒業式を迎えるまでを描いた作品だ。こう書くと青春もののようだが、実態はいつもの画太郎節である。学校の教師や校長もろくでもない人物ばかりで、キャラクターの顔芸と、テンポの良い展開が見どころである。

『ババアゾーン』

 タイトルはジャンプで連載されていた『アウターゾーン』のパロディであり、内容は『笑ゥせぇるすまん』的なブラックユーモアである。1話完結形式で全2話だが、中身はぜひ読んでのお楽しみとして割愛するが、中身は正気ない話をここまで引っ張れるのかと驚くほどの画太郎の筆力に圧倒される。

 そして、主人公の性格や顔が途中からどんどん変わっていき、別人のようになってしまうのも画太郎の様式美である。

『けつだいらまん物語』

 短編集『まんカス』に収録。歌手の“けつだいらまん”がコンサートを終えて便所に直行し、ハプニングに見舞われる話。「ケツマンサンバ」というどこかで聞いたようなタイトルの歌を披露し、最後に「オーレイ!」と叫んだときの顔は、似顔絵の名手でもある画太郎の最高傑作と言っていい。

 なお、その顔はけつだいらまんのモデルとなった某時代劇俳優ではなく、某ドリフメンバーがモデルであろう。また、「けつだいらまんコンサート」と書かれたステージの、「けつだいら」「ンサート」を除く部分にスポットライトが当たってある単語が強調されているなど、いちいち芸が細かいのも素晴らしい。

 ほかにも、『DRAGON BALL外伝』『エスカレーション』などの初期の名作や、音楽に情熱を傾ける男たちの生き様を描いた『ハデー・ヘンドリックス物語』、森三中の大島美幸と鈴木おさむの結婚生活をリアルに描いた『ブスの瞳に恋してる』などもおすすめしておきたい。また、『世にも奇妙な漫☆画太郎』は7巻まで出ているが、基本的に1話完結のオムニバス形式なので、どの巻から読んでもいい(つまり、古本屋で適当に見つけた巻を買って読み始めてもいいのである)し、画太郎が短編の名手であると実感できる作品が揃い、必見である。

 画太郎は昨年にデビュー30周年を迎え、画集の発刊や、新しいジャンルとして『笑本 おかしばなし1 ももたろう』(誠文堂新光社)がヒットするなど存在感を発揮し続け、新しい読者を獲得している。短編が多く、長編でもほとんど中身がないに等しい画太郎作品は、夏休みに一気読みするのにぴったりだ。ジャンプが生んだ最大の奇才の世界にどっぷりと浸ってみよう。

『笑本 おかしばなし1 ももたろう』(誠文堂新光社)

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