坂本龍一、文芸誌『新潮』でガン闘病を語る自伝連載開始「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」

『新潮』で坂本龍一の自伝

 音楽家・坂本龍一による自伝「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」の連載が、6月7日(火)発売の月刊文芸誌『新潮』7月号より開始した。(坂本氏の写真:zakkubalan ©2022 Kab Inc.)

 坂本龍一がガンの再発を公表したのは、2021年1月のこと。直腸の原発巣と数カ所の転移巣を摘出する、20時間に及ぶ外科手術をはじめ、このわずか1年のうちに大小6つの手術を経験し、病気の治療に努めてきた。もっとも、その間も音楽への情熱を失うことはなく、アーティスト・高谷史郎氏と共作したシアターピース『TIME』など、いくつもの作品を発表している。

 『新潮』では、2009年に刊行された自伝『音楽は自由にする』(新潮社)の続篇として、坂本みずからが過去十余年の活動と人生を振り返るプロジェクトを開始する。同世代で旧知の仲である編集者・鈴木正文氏が聞き手となり、坂本の口から、実に豊かな言葉が引き出された。

 連載第1回のタイトルは「ガンと生きる」。入院先でのパートナーや友人とのエピソードから、両親の訃報に接したときのこと、そして自身の死生観や創作観の変化についてまで、初めて明かされる事実が赤裸々に語られるという。注目の内容となっている。

坂本龍一コメント

夏目漱石が胃潰瘍で亡くなったのは、彼が49歳のときでした。それと比べたら、仮に最初にガンが見つかった2014年に62歳で死んでいたとしても、ぼくは十分に長生きしたことになる。新たなガンに罹患し、70歳を迎えた今、この先の人生であと何回、満月を見られるかわからないと思いながらも、せっかく生きながらえたのだから、敬愛するバッハやドビュッシーのように最後の瞬間まで音楽を作れたらと願っています。

そして、残された時間のなかで、『音楽は自由にする』の続きを書くように、自分の人生を改めて振り返っておこうという気持ちになりました。幸いぼくには、最高の聞き手である鈴木正文さんがいます。鈴木さんを相手に話をしていると楽しくて、病気のことなど忘れ、あっという間に時間が経ってしまう。皆さんにも、ぼくたちのささやかな対話に耳を傾けていただけたら嬉しいです。

プロフィール

坂本龍一(さかもと・りゅういち)
1952年東京生まれ。3歳からピアノを、10歳から作曲を学ぶ。東京芸術大学大学院修士課程修了。1978年『千のナイフ』でソロデビュー。同年、細野晴臣、高橋幸宏と「YMO」を結成、1983年に散開。出演し音楽を手がけた映画『戦場のメリークリスマス』(1983年)で英国アカデミー賞音楽賞を、『ラストエンペラー』(1987年)でアカデミー賞作曲賞、ゴールデングローブ賞最優秀作曲賞、グラミー賞映画・テレビ音楽賞を受賞。その他、受賞多数。1999年制作のオペラ『LIFE』以降、環境・平和活動に関わることも多く、論考集『非戦』の監修、森づくりを推進する「more trees」の設立など、活動は多岐にわたっている。2006年には、「音楽の共有地」創出を目指す新しい音楽レーベル「commmons」を立ち上げた。2009年、初の自伝『音楽は自由にする』を刊行。

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