Official髭男dismの曲をうまく歌うコツとは? ボイストレーナー・いくみが語る、楽しい歌の練習法
教える方が今は楽しい
――ところで、2016年にYouTubeに動画を上げた時はどういう経緯があったのでしょう。いくみ:ボイトレを始めたばかりの頃で、生徒を増やす宣伝として始めました。だんだんとコメントが増えたり、反応が来るようになると楽しくなっていったんです。当時は月1回とかのペースで上げていましたね。最初の動画は暗いし、ペラペラの紙で説明してましたが、そこから少しずつ今の形に変わって。当時は友達(今の旦那さん)が編集をやってくれていました。今は教えてもらって自分でやっていますが、今でもサムネイルや音声編集は彼がやってくれています。
――2018年6月の腹式呼吸の動画からクオリティや雰囲気が一気に変わりましたが、何かブレイクスルーがあったり?
いくみ:YouTubeを始めた頃はレッスンに来てもらうのが目的なので真面目に、とテンションを抑えていたんです。そうしたら、またも旦那さんが「抑えなくていいんじゃない? 明るく行こうよ」と言ってくれたんですよ。これをきっかけに「素で行こう」と。それから自宅で撮り始めるようになった、この動画から出だしの挨拶を取り入れたり、素の私で話すようになりました。
チャンネル登録者数は1年ほどで1万人を超えて、次の1年では7万人くらいに増えました。そこからは週2で動画を上げたりして。やってることが報われてるなと感じたのは、その時かもしれません。コロナ禍になってからはさらに増えています。
YouTubeを始めてから世界が変わりましたね。テレビに出れたし、たくさんの芸能人の方をレッスンさせてもらえました。
――では「いくちゃんねる」を運営するに当たって、ほかのチャンネルと差別化しているポイントは?
いくみ:やはりブレス表です。息継ぎひとつも一生懸命歌っていると忘れてしまいがちですが、書いてあると吸えますからね。私の動画からインスパイアされた表を使っているYouTuberは多いと思いますよ(笑)。
あとは、ほかのチャンネルはやり方に特化しているものが多いですが、うちは曲に特化しています。発声練習では声が出るのに歌になると出ない人もいるんですよ。練習も大事ですが、実際に歌うのは曲ですから。
――もともと歌はどこで勉強されたんですか?いくみ:学校で勉強はしてなかったのですが、ユニットを組んだり、アイドル活動をしたり、バンドをやったりしていたんです。検索しても出てきませんが(笑)。その流れでボイストレーニングを受けていて、発声法は習った先生から学びました。
――自分が指導していく立場になったのはなぜでしょう。
いくみ:自分で歌うことについては、もうやり切ったんですよ。やり尽くして、一度は音楽を辞めているんです。普通の大学も出ていたから、その間はOLをやっていました。でもやっぱり「音楽やりたいな」と思い始めたんです。そこで自分にできることを考えていたら、ボイストレーニングならできるかなと。
そこから勉強を始めて、2年くらいは夕方までOL、夜レッスンの仕事という生活でした。最初の発表会も7人くらいしか出る人がいなかったですね。ボイトレが忙しくなって、仕事をしなくてよくなってからは歯医者さんで少し働いたりもしました(笑)。
――アーティストであることに未練はありませんでしたか?
いくみ:ないですね。教える方が今は楽しいです。ただ私の歌を聴きたい方もいるので、2年前にはオンラインでバースデイライブもやりました。楽しかったですが、いつの間にかステージ側に立つよりもプロになりたい子がオーディションに受かったり、ライブで輝いているのを見るのが嬉しいという心境になりましたね。
■書籍情報
『歌うま本 上手くなるのは意外と簡単だ』
いくみ 著
価格:¥1,430(税込)
刊行日:2022年4月28日
出版社:実業之日本社