女性警察官の2人組活躍する“バディ漫画”はなぜ人気? 『ハコヅメ』のヒットで振り返る名作たち

女性警官のバディ漫画はなぜ人気?

 そんな2作品の間にあって、コミカルでありながらリアルでもある女性警官ペアの登場する漫画が、1986年に登場した『逮捕しちゃうぞ』と『ブラッディエンジェルズ』だ。『逮捕しちゃうぞ』は言うに及ばず、『ああっ女神さまっ』の前から藤島康介が描き始めていたシリーズで、TVアニメや劇場アニメ、そしてTVドラマにもなって今なお根強い人気を誇っている。

 先輩後輩の関係にあった『ハコヅメ』や『ミニぱと』のペアとは違い、主人公の辻本夏実と小早川美幸は同輩で、指導しながらの成長といったドラマはない。ホンダトゥデイのミニパトでパトロールしている2人が違反者を見つけては、夏実が体力でねじ伏せ、美幸がドライビングの腕と悪知恵でこらしめる絶妙なコンビぶりで楽しませてくれる。そこに警察ならではのリアルさはないが、『逮捕しちゃうぞ』の場合は登場するメカや小道具の描写のリアルさで魅せる。

 ホンダトゥデイをはじめ、トヨタ800にマツダキャロルにスズキのバイクGSX-R750といった実車が、そのままのフォルムで描かれた上に大暴れする姿にメカ好きたちは喜んだ。なおかつ美少女キャラたちの圧倒的の可愛らしさが、漫画の表現を一段の高みへと誘ったことは間違いない。それはみず谷なおきの『ブラッディエンジェルズ』にも言える。

 こちらも同輩の新任警察官で、幼い体型の内海夕紀と長身でスタイリッシュな高御堂聖というペアが、モーリス・ミニのミニパトで走り回っては違反車に体当たりをかまし、不審者を投げ飛ばして捕まえる。こすっただけで事故を問われる『ハコヅメ』のリアルなパトカー描写を経た今では、『ミニぱと』『逮捕しちゃうぞ』ともども、絵空事だと言われてしまいそう。

 それでも、「週刊少年サンデー1983年9月増刊号」に掲載されたデビュー作「ズーム・イン!」で驚かせた絵の巧さ、展開の面白さが受け継がれたシリーズは、細野不二彦やゆうきまさみが『さすがの猿飛』や『鉄腕バーディー』で活躍していた「週刊少年サンデー増刊号」にあって、引けを取らないクオリティを見せていた。惜しくも1999年に死去したみず谷なおきが存命だったら、『ハコヅメ』人気を見て何を思うか、それ以上にどれだけの傑作を生み出していたかが、今とても気になっている。

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