【漫画】祖父のお葬式、涙が出なくても大丈夫? 言葉にできない気持ちを描いた漫画にSNSで共感の声

ーー現在Twitter上で『その一日は、』が大きな反響を呼んでいるかと思います。今の気持ちを教えてください。

岸田夏子(以下、岸田):眠れなくなってしまうほど驚きました。とくに「うまく言葉にできずにいた気持ちを漫画にしてくれた」という感想がうれしかったです。

 私自身言葉に出来ない感覚を昇華する為に漫画を描いています。作品を通じて自分の感覚を伝えられたことがうれしかったです。

ーー本作を創作したきっかけについて教えてください。

岸田:『その一日は、』は2年前にweb漫画サイト「トーチweb」の漫画賞に投稿するため描いた作品です。佐々木倫子先生の漫画『おたんこナース』に収録されているお葬式のエピソードがすごく好きで、自分も同じような作品を描きたいと思いました。そのため数年前に参列した祖父のお葬式を思い出しながら描きました。

ーーお葬式に参列した当時の心情について教えてください。

岸田:驚きと戸惑いがありました。みんなでお酒を飲んで、たくさんしゃべって、笑って。こういうお葬式があるのかと思いながら、その場の雰囲気を不思議に感じていました。

ー-笹を持って歩くシーンはどのような儀式だったのでしょうか。

岸田:現地に伝わる故人とのお別れ、また生きている人と亡くなった人の世界を分けることを意味する儀式らしいです。

 舞台となった土地で笹は様々な道具をつくる材料とされており、そこに暮らす人々にとって身近な存在であるためお葬式でも使われていると聞きました。

ー-本作を描くなかで意識されたことは?

岸田:こんなふうに感じているのは自分だけかもしれないという感情を、いつも漫画に救われてきました。今度は自分が誰かの気持ちを救えるような作品をつくりたいなと思い、本作をつくりました。

 今となってはお葬式のなかで「楽しい」という言葉を描いたことは、少し直接的過ぎたかもしれないと反省しています。ただ自分の感じた「こんなお葬式があってもいいんだ」という思いが伝わればいいなと思いながら描きました。

ー-創作活動を始めたきっかけを教えてください。

岸田:子どものころから漫画が好きで、小学生のときに漫画を描き始め、高校生のころには原稿用紙に漫画を描き、大人になっても漫画を描くことをやめられなくて。子どものころから好きだったものをまだ続けているといった感じです。

ー-漫画を読むことと描くこと、それぞれの楽しさとは?

岸田:漫画を読んでいるときは夢中になっているので、いやなこととか悩んでいることがあっても忘れられるんですよね。現実とは違う、もうひとつ世界があるみたいだと感じています。

 漫画を描く楽しさは“スッキリ”することですね。日々のなかで描きたいことや感じることが多くあり、自分の思いが漫画というひとつの形になることが楽しいです。でも漫画を描くようになってから、以前よりも漫画に夢中になれることが少なくなりました。

ー-なぜ夢中になって漫画を読むことができなくなったのですか?

岸田:漫画としての面白さを考えてしまうためです。漫画を描くにあたり、いろんな漫画を読むなかで「ここがいい!」と分析するようになったのですが、漫画を分析することがクセとなってしまったのです。夢中になって漫画を読んでいたときのような、純粋な読者になれなくなってしまったことが少し残念です。

ーー今後の目標について教えてください。

岸田:とにかく、たくさん漫画を描きたいです。本作や前回描いた漫画がお葬式を題材としたものであったため、恋愛や家族などいろんなテーマを題材とした漫画を描くことに挑戦したいです。

 年を重ねる過程や社会が変化するなか、その時々で感じることがたくさんあります。自分の感じたことを漫画として表現していけたらと思います。

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