『SLAM DUNK』なぜ県予選準々決勝の相手は翔陽だった? 物語上の必然性を考察

控え選手たちの熱き戦い

 個人的に翔陽戦は、湘北の選手層の厚さを感じさせられた試合でもある。後半残り2分30秒にはスタミナ切れで交代した三井、残り1分50秒に5ファールで退場した桜木の2人の主要メンバーを欠くなか、県No.2のプライドをかけた翔陽の猛攻を耐え切ったのだ。

 この時、三井と桜木の代わりに入ったのが、木暮公延と角田悟。藤真が入った"完全体”の翔陽を、残り1分50秒とはいえ逆転を許さなかった。陵南戦で活躍する木暮はもちろん、角田も決して悪い選手ではなく、「目立たずとも努力を重ねている選手なんだ」と感じた。

 陵南の監督・田岡は、湘北の不安要素として“選手層の薄さ”を挙げた結果、足元をすくわれたわけだが、確かに、ベンチメンバーを実力不足と決めつけるのは早計だったように思う。ちなみに、インターハイの豊玉高校戦でも、控えのガード・安田が試合の雰囲気を変える活躍を見せており、ベンチも含めて戦っているのだ、という説得力を感じさせられた。バスケットボールは5人では戦えないのだ。

 翔陽戦において一番の疑問は、「なぜこれほどの強豪校なのに監督がいなかったのか?」(藤真が選手兼監督を務めていた)である。しかし、そのことが決して強豪校とは捉えられていなかった湘北高校の勝利に違和感なくつながっており、やはり翔陽戦は物語を進める上での多くのポイントが存在した、注目すべき一戦だったといえるだろう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる